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○ 行政と民間の役割分担について

 

仙台市だけでなく、その他の各市における同様の取組みの状況とも比較した際の、概ね共通していた大きな検討課題の一つとして、まず、都市的土地利用、つまり自分達のまちのデザインをどこまで考えておくのかということを明確にしておく必要があるというものであった。例えば、まちの中心部と郊外では求める施設の機能とそのデザインは自ずと異なるものであることは言うまでもない。次に、誘導基準を明確にしておかないと施策としての実効性が担保されないこと、そして、上記のような取組みは、仮に一定の補助金等による支援を考えたとしても、最終的には、民間事業者にコスト増を強いるものであるからである。

大都市に限らず、施設整備に当たっては、行政としての取組みはもちろんのこと、現場の人たちが問題意識を持って取り組むことが必要であることは言うまでもない。しかしながら、まちづくりにおいて、長期的なビジョンを示し、住民にインセンティブを持たせて持たせていく役割は引き続き住民に最も身近な行政主体である地方公共団体であろう。事業の展開に当たっては、どこまで行政がやるか、やれるのかを先ず明確にし、行政が直接対応できない部分や、行政が直接対応すべきでないとした部分については、民間事業者の自発性とこれを誘導する行政主体の姿勢を示しておくことが、先ず当面の課題の一つとなる。そして、その上で、地区住民との協働により、地域に根ざしたきめ細かい施策を進めるべきである。

 

○ 具体的な事業展開について

 

一定の都市基盤が整備されている大都市においては、将来のまちづくりのために求められる事業は、必ずしもハード整備に限られない。長期的に展望すべきテーマを、仮に、高齢化社会への対応と考えた場合、公共施設の整備はもちろん、在宅のソフトサービスの充実や、人を含めた社会資本の整備も、欠くべからざるテーマである。これは、テーマが少子化対策であっても、基本的には変わらないと考えるが、将来のまちづくりのための事業展開に当たっては、公共施設整備等のハード事業だけでなく、老人保健など各種のソフト施策まで広範な施策を組み合わせて実施していくことが求められている。

 

○ その他

 

行政の果たすべき役割を明確にし、具体的な事業内容が確定した場合であっても、最終的な財源が確保されない限り、行政として、有効な施策の実施は不可能である。

自治省では、平成3年度に、国のゴールドプランを受けて、地域福祉特別対策事業を設け、この中で、すでに、高齢者・障害者にやさしいまちづくり事業を実施しており、平成10年度の事業指定実績は、事業数267件、総事業費430億円となっている。主な対象事業は、歩道段差の切下げ、歩道と一体的に行う障害物(電柱等)の除去、歩道上のベンチ設置、階段のスロープ化、手すり設置、車いす用トイレの設置、エレベーターの設置、自動ドア、障害者用避難誘導システムの設置など公共施設等の改良を体系的一体的に行うものであり、個々の公共施設等のバリアフリー化には大いに貢献してきている。

その一方、今後、すべての人が安心して、快適な生活が出来るようなまちづくりを行うためには、個々の公共施設の層の改良(点的な整備)のみならず、地域全体が高齢者・障害者を含めたすべての人にとって、移動しやすくなるような面的・総合的な整備が必要である。このため、自治省においては、平成11年度より、すべての人にやさしいまちづくり事業を創設して、従来の事業に加えて、すべての人が利用しやすいユニバーサルデザインの見地に立った各種のハード、ソフト施策に対する地方債及び地方交付税による支援を検討していくこととしている。

 

 

 

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