3] 公共投資の実施過程の変革
大都市における公共投資は、その地価が高いこと等から、一般的に事業費が高騰することが多く、事業実施に当たっては、費用対効果に関する十分な検討が求められているが、これまで、依って立つべき定量的な測定方法があったわけではなく、その意味では、必ずしも費用に見合った投資が行われていることを確認できない状況である。
また、先に述べたような、国・地方を通じた厳しい財政事情の下で、今後の公共投資に当たっては、真に必要な事業について、集中的かつ効率的に推進していく必要があることを踏まえれば、今後の大都市における公共投資に当たっては、選択された事業手法が本当に適切なのか、事業の際には、どれだけの費用が必要なのか、また、その事業によって得られる利益は本当に投資に見合ったものなのかということを明らかにしていくことが求められている。これはまさに、前掲のVFMの考え方であって、このVFMに基づくPFI手法は、大都市において、一つの選択肢として、意義のあるものであると思われる。
2 現地調査事例を中心とした検討
(1) 少子化・高齢化等長期的展望に基づく新たな社会資本整備
先に述べたとおり、都市部においては、特に、少子・高齢化社会の到来を見据えた社会資本整備の必要性が増大しているところである。そこで、この項では、仙台市における取組み事例に対する考察を踏まえて、検討を行うこととする。(取組みの詳細は各論を参照)
1] 取組みの現状
仙台市においては、今後予測される少子・高齢化社会の到来に向け、「ひとにやさしいまちづくり条例」を制定している。この条例の目的は、障害者や高齢者等を含めたすべての人が円滑に利用できるように、建築物、道路、公園等の整備を促進するというものであり、これらの人による円滑な利用のために必要な施設の新築・増改築を行う場合には、補助金や資金融資のあっせんなどの一定の財政支援を行う「ひとにやさしいまちづくり施設整備補助金」及び「ひとにやさしいまちづくり施設整備資金融資あっせん事業」を創設しているところである。
これらの事業の推進により、行政をはじめ、事業者や市民の理解と自主的な取組み無くして「ひとにやさしいまち」はつくれないという共通認識を築き、実践的な取組みを増しながら地域特性を活かした都市づくりを進めていくこととしている。
2] 今後の課題等
仙台市に限らず、多くの大都市において、同旨の施策を検討している都市が見受けられたが、その施策の実施に当たって、当面検討すべき課題及び国としての対応は、以下のとおりである。