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第1部 総論

 

I 社会経済構造の変化と今後求められる公共投資

 

1 社会経済構造の変化

 

(1) 少子・高齢化等の社会構造の変化

 

我が国の65歳以上の高齢者人口は、平成9年6月に14歳以下の年少人口を上回り、10年2月には2,000万人を超えるなど、急激に増加しており、厚生省の推計によれば、2035年には3,279万人に達するものと予測されている(図1)。また、晩婚化・非婚化の進展による出生率も低下しており、2034年には、高齢者人口は、年少者人口の2倍を上回るものと予測されている。この急激な少子・高齢化の進展の背景としては、生活水準の向上や医療技術の進歩、女性の経済力の向上に基づく「結婚・出産以外の選択肢の増大」などが挙げられる。

地方公共団体においては、こうした変化に合わせた公共投資が十分とは考えられておらず、少子・高齢化社会の到来を見据えた施策の充実がより重要なものとの認識の下で、公共投資への取組みがなされている。全都道府県及び全市町村を対象にして、自治省が毎年度実施している「地域政策の動向調査」によると、平成7年度から9年度までの地方公共団体における重点施策として、行財政改革の推進や産業の振興などを押さえて、生活基盤の整備及び社会福祉の充実が都道府県・市町村を通じて第1、2位に挙げられている(図2、3)。

 

(2) 経済情勢の変化

 

バブル経済の崩壊以来、我が国の民間経済は未だ回復の兆しが見られない状況である。特に、平成9年秋以降の金融機関の破綻やアジア通貨危機等による金融システムの不安定化、「貸し渋り」等が顕在化している。そのため、政府は、10年度において、過去最大規模の経済対策を決定したところであり、今後、その成果が期待されている。

一方、国及び地方財政においても、税収減等により、大幅な財源不足が生じている状況である。特に、地方財政は、地方税収等の低迷や減税による減収の補てん、景気対策等のための地方債の増発等により、借入金残高が急増しており、平成10年度末においては、地方債(普通会計債)残高が115兆円、これに交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金残高及びその償還財源を負担することとなる公営企業債残高を加えると、借入金総額の総額は156兆円にのぼる見込みとなっており(10年度当初ベース)、今後、その元利償還が財政を圧迫する要因となることが懸念される。

こうした、国・地方公共団体における財源不足により、公共投資に必要な財源の確保についても、今後益々困難なものとなっていくことが予想される。このため、公共投資の実施に当たり、事業の重点化・効率化等が今後一層重要な課題となろう。

 

 

 

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