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「大都市における公共投資のあり方」

〜社会資本整備の新たな手法と活用法策等について〜

 

はじめに

 

国民が豊かでゆとりある生活を営むためには、適切に社会資本の整備がなされることが重要であるが、そのためには民間・市場経済システムに依存するのみでは必ずしも十分ではない。このため社会資本の整備に関し、国・地方公共団体をはじめとする行政主体の役割が重要となるのであり、具体的な公共投資のあり方やその内容等について、これまで盛んに議論が行われてきた。21世紀を目前に控えた現在、我が国の社会経済情勢が大きな転換期を迎えている中で、行政主体による公共投資のあり方やその内容等についても、かかる転換に合わせた適切な対応が求められている。

我が国においては、バブル経済の崩壊以降、民間経済の低迷が続いており、急激な回復は見込めない状況にあって、「右肩上がりの経済の終焉」と言われる状況に至っている一方で、国・地方における財政状況は、税収減等により、引き続き危機的状況にあると考えられる。また、社会情勢に目を転ずれば、我が国においては社会の少子・高齢化が世界に類を見ないスピードで進展している。

このような状況の中で、国・地方における公共投資は、これまでよりも、一層、長期的な視野に立った公共投資政策や既存ストックの活用、費用対効果等の観点からの投資の効率化・重点化などが求められる。特に、行政・経済の中心であるとともに、人口が密集し、生産・消費活動の集中している大都市においては、こうした要請への対応は、まさに喫緊の課題であるといえる。

本委員会は、東京都及び各指定都市の企画担当課長並びに自治大臣官房地域政策室長等を委員として、「市民参画型社会の構築と大都市行政(平成8年度)」「大都市における環境行政(平成9年度)」など、大都市の抱える様々な問題を毎年度検討して、今後の国・大都市における政策展開等に反映させること等を目的に昭和53年度から検討を行ってきたところであるが、本年度においては、上記の問題意識の下で、検討を行い、委員会及び現地調査における各委員の意見、議論等をもとに取りまとめたものとして本報告書を作成した。一口に大都市といっても公共投資の状況や抱える問題点は様々であること、及び、1年という時間的制約から十分に議論が尽くされたとはいえないこと等から、公共投資のあり方を考える際に検討すべき課題や、公共投資の現状と問題点の把握、更に問題点解決のため各団体が採り得る施策オプションの紹介等にとどまっているが、本報告書が地方公共団体における社会資本整備に係る施策オプションに何らかの参考になれば幸いである。

なお、「公共投資」という語は、本来は新SNA(国民経済計算体系)における公的総固定資本形成に用地費・補償費を加えたものと理解されているが、本報告書においては、「社会資本整備のための公共事業」とイメージして頂ければ、本報告に対する理解の資となると考える。

 

 

 

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