価値尺度財が実際の公的支出や歳入以外の計量である場合
(v) 名目的キャッシュフローを割り引く場合の通常の算定方法では、英国大蔵省の提示した予測総合インフレ率を使用してこうした名目的キャッシュフローを実質的キャッシュフローに換算すべきである。この場合は、あらゆる費用と便益を同一の実質的単位に算入するので、すべてに同一の実質的割引率を使用できる。しかし実際には、名目的キャッシュフローを直接割り引く場合に名目的割引率が必要になる場合もある。この名目的割引率は、実質割引率に比べ予測総合インフレ率に相当する量だけ高くすべきである。
(vi) 「実質的通貨価値の時系列的変動量」を割り引く場合は、通貨価値の時系列的変動に対して費用や便益を調整してから標準割引率で割り引く代わりに、簡略方法として割引率を調整する方が便利なこともある。(この2つの方法からは同じ解答が得られるはずである。しかし、標準割引率を調整すれば、不要な条件設定を設定する必要もない。その一例としては、本別添添付資料の第17項で例示する限界効用の時系列的割引がある)。
特例的システムリスクがある場合
(vii) 費用や便益の推定値に見られる「楽観的見通し」を相殺する方法として割引率を高めることは、民間部門の慣例では異例のことではない(もっとも、ファイナンス・マネジメントの教科書では決して奨励されてはない)。しかし、別添Bで説明したように、事実上すべての公共用途に見られる楽観的見通しは、割引率の変更ではなく、別の方法で処理すべきである。しかし、「特例的システムリスク」(将来の収入との共変量が異常に高いリスク)を示す費用や便益に対しては、割引率引上げのケースも考えるべきである。その第1段階は、本別添添付資料の第6項に示す式を使用してこのリスクの影響を試算することである。そうした場合には、英国大蔵省に相談すべきである。
特定機関に対して特別の政策調整が行われる場合
(viii) 総資産に対する「法定収益率」による規制を受ける機関では、投資の事前評価のための割引率は、特定機関ごとの個別交渉により、所要平均収益を得るために選定した値に決めることもできる。
割引が非常に長期に渡る場合
(ix) プロジェクトや政策の事前評価が(50年を超える)非常に長期的な結果の割引率に実質的に左右される場合、部局ではもっと低い割引率の方が適しているかどうかも検討できる。この場合の割引率の決定は、英国大蔵省とも協議の上、ケースごとに行うべきであるが、実際には6パーセントの割引率が通常の条件設定として採用される。
法定収益率
5. 中央政府の一部機関では、商品やサービスを商業的に販売している。その販売先は政府自体か、国有企業のように経済部門全般である。こうした事業は、事業全体に使用した資本に対する「平均」法定収益率(RRR)が得られるような価格を設定するという規制を受けることがある1。この法定収益率(RRR)は、租税と利益を差し引く前の現行費用(つまり実質的費用)により算定される。
1 歴史的理由により、国有企業の法定収益率(RRR)は新規投資プログラムにしか適用されておらず、その初期資本に基づくもっと低い収益率も認められている。特定生産物の生産に使用される資本すべてに所要収益率(RRR)が適用されている場合、公共サービスにはこの低収益率は適用されない。