19. 不動産やその法定権益のコスト計算を賃貸料ではなく資本価値の面から行う場合は、予定利用期間終了時や査定期間終了時における残存価値や処分価値を費用とみなすべきである。しかし、プロジェクトが実際に実施されない場合には(また、その土地が公有のもであってもなくても)、実質的土地価格の変動による保有収益が生じても、それをプロジェクトの便益とみなすべきではない1。
20. 予測収益自体が公共部門の活動結果である場合は、そうした影響も事前評価に加えるべきである。その例としては、都市再活性化プロジェクトや洪水防止の事前評価がある。そうした場合は、不動産価格の騰貴自体が極めて不確定なものとなる恐れがあるので、細心の注意を払う必要がある。プロジェクトが予測収益の実質的不足に耐えるものかどうかを確認する場合は、不動産専門家に相談し、感応度分析を採用すべきである。また、計画案と比較する各種案を十分指定することも重要である。洪水防止の場合は、代替用地がない場合に限り、洪水防止対象の土地の価値上昇分が洪水防止という便益の適正評価値となる。その他の選択肢も検討する必要がある。そうした場合には、他の便益評価値も算入する場合に起こりがちな二重計算を回避するように注意する必要がある。
21. 土地と建物の価値を区別するのは有益である。それは、建物の価値がその耐用期間中に実質的に低下するからである。用地の価値は、上昇したり低下したりするという点で建物の価値と異なる動きをする。土地の価値低下要因としては、たとえば汚染、採鉱、地盤沈下などがある。
事前評価期間
22. 事前評価期間終了時における建物の実質的残存価値は、確認がむずかしい。それは、建物の価値低下が必ずしも直線的ではないからである。したがって、不動産専門家の助言を求める必要がある。用地の場合は、上記第20項と第21項に述べた事態も予想されるが、その価値は実質的に変わらないと想定するのが通例である。しかし、用地の価値を事前評価する前には、土地を更地にする必要があろう。
23. 事前評価期間を決定したら、建物の経済的寿命と物理的寿命を峻別する必要がある。たとえば、近代的オフィスビルの物理的耐用年数は通例約60年である。しかし、その物理的寿命期間中に、改装により建物の価値を上昇させることもできる。そうした場合の事前評価では、改装、再開発、処分の相対価値を判定する必要がある。建物の経済的寿命は、改装時点までの期間である。寿命期間中には通常建物を何回か改装する。そのため、経済的寿命は通常、物理的寿命に比べはるかに短くなる。
1 当初市場価格にはそうした保有収益の期待値が反映されるので、そうした保有収益を算入する技術的ケースもある。したがって、後で発生する「便益」を相殺する「費用」もある。しかしながら、そうした保有収益を除外する管理上の理由もいくつかある。不動産価格の騰貴が財政的目標を達成しやすくするとしても、それは公共部門管理に対する誘因とはなりそうにない。公共部門としては、市場価格が高騰する資産を固定化する気にはならないはずである。また、特定処分の時期に関するコンサルタントの助言を無視して、乏しい資源を不動産価格の予測に転用するのもよくない。その上、会計規約では、当初の簿価を越える実質的資本騰貴分を収益とみなしてはいない。