24. 経済的寿命を正確に予測することはむずかしいが、新築の建物の場合は通例15-25年と思われる。賃貸建物の場合は、標準施設の近代的賃貸借契約期間がたいてい15年、25年、35年のいずれかである。賃貸建物の場合は、特別の理由がない限り、その賃貸期間に渡って事前評価するのが経験上妥当である。また、こうした事前評価期間を採用すれば、自由保有建物と賃借建物の比較が容易になる。
25. 建物の事前評価期間はその経済的残余寿命と等しくすべきである。しかし、特定用途向けに建物が建造され、そうした不動産の市場がない場合は、特例として、物理的寿命期間で建物を事前評価するのがよい。そうした建物の一例は裁判所の建物である。こうした建物は通常、職員の一時移転を伴うような大規模な改装工事を行わずに、少なくとも60年間は耐えるように設計されている。病院や刑務所の場合も同様であるが、そうした施設に対する設計理念が時と共に予測できないほど変わることもある。そのため、建物内部のレイアウトを弾力化できるような設計方式の便益をある程度重視する方が賢明である。
26. 事前評価されるプロジェクトの期間が建物の経済的寿命を超える場合は、建物から一時移転する費用並びに建物の改装及び再開発費用を考慮に入れる必要がある。他方、建物の経済的寿命がプロジェクト期間を超える場合は、自由保有不動産の試算残存価値と、賃借建物の譲渡または転貸が特に重要になる。
27. 適正レベルの現行保守費は酌量すべきである。適正基準の保守作業を実施しない場合は、自由保有不動産の改装費増大や販売価格引下げに反映されるが、賃借建物の場合は賃貸借契約満了時に損耗料を支払うことになる。
28. 土地の供給量を一定と仮定した場合には、長期的には財産税が賃貸料や土地価格を引き下げるという影響を及ぼす。そのため、プロジェクトの費用には営業税もしくは課税査定額分の寄付金(CILORs = contributions in lieu of rates)も算入すべきである。
購入か賃借か?
29. 事前評価では通常、自由保有不動産と賃借不動産の選択を行うべきである。政府の資本調達費は民間資本の資金調達費に比べて少ない。そのため、建物を購入する方が賃借するよりも金銭的効率性が高くなる場合が多い。時には、立地、利用率、サービス提供、民間地主によるリスク引受けといった要素がこうした利点を相殺する場合もある。
30. 土地と建物の賃貸借契約は通常営業上の賃貸借契約に分類される。つまり、賃貸借契約の資本化価値は支出引当金にとって不利になるとみなす必要はない。賃貸借契約がファイナンス・リースとなれば、いくつかの問題が生ずる。ファイナンス・リースは、資産所有権に伴うほぼすべてのリスクと報酬を賃借人へ移転する賃貸借契約である2。ファイナンス・リースの資本価値は政府の一般歳出(GGE)に算入され、支出引当金においてそれに相当する削減が行われることもある3。むずかしいケースについては、初期段階において金融部門や英国大蔵省と協議すべきである。
2 完全な定義については、「賃貸借契約と割賦契約の会計」(S S A P22 "Accounting for Leases and Hire Purchase Contracts" 1984年8月発行)を参照されたい。S S A P22の"Guuidance Notes"(第140項)では、「土地と建物に関する多くの賃貸借契約は、建物の耐用年数のほんの一部の期間に渡るもので、賃借人は価値上昇といった経済的便益を受けることがない」と述べている。そして、「したがって、土地と建物に関するほとんどの賃貸借契約は営業上の賃貸借契約に分類されよう」と推断している。
3 公共部門がすべてのリスクを負う延払い購入契約などの純粋な金融契約に対しても、同様の扱いが適している。