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9. 市場価格には、特定の土地利用による現在または将来のアメニティや環境への影響が必ずしも反映されるとは限らない。そうした非市場的影響の評価については、別添Cにおいて検討している。一般的に、そうした影響が認められる場合には、たとえば新設予定の道路沿いにある土地は上述の市場価格で評価すべきだが、環境影響報告書も重視すべきである。こうした環境影響報告書は、市場価格では捕らえられない用途変更による環境関係の費用や便益(重要な史跡や歴史的建造物にとっては現存価値とオプション価値も含む)を反映させたものとすべきである。

 

10. 現在の土地用途に助成金が交付される場合は、その助成金の影響を反映させるように市場価格を調整する必要もあろう。特に農地の市場価格は、用途変更を事前評価する場合に調整を加える必要が生ずることもある。市場価格は、社会的な費用や便益よりもむしろ私的な費用や便益を反映させたものである。農地の市場価格には、生産者にとっての農業保護の価値も算入されている。限界農地価額の変動を検討する場合は、通常、将来の英国及び欧州連合(EU)助成金による英国納税者に対する予測影響を反映させ、土地の市場価格に下方調整を加えるのがよい。

 

11. 標準型オフィス施設のように建物が利用者のさまざまな要求を満たせる場合、最も収益性の上がるように建物の価値を評価することは公正単純に行える。しかし、病院や刑務所といった多くの公共施設は、簡単には他の用途に転用できない。建物の代替用途がない場合は、再開発用地の価値と、現在用途における用地と建物の評価額のうち、いずれか高い方を採用すべきである。

 

12. 特定不動産の市場が発達していなくても、関連市場情報が得られる場合もある。こうした情報は、各種代替用途を識別し、それに応じて価格を評価するか、同じような建物の市場取引から得られる数少ない価格証拠データを利用すれば得られる。たとえば、NHS(国民健康保険制度)適用病院の市場価値を評価するには、民間病院部門の証拠データを利用できる。だが、たとえば規模の面などで同じようなものを比較する場合は慎重を要する。こうした方法による価値を試算する場合は、不動産専門家やエコノミストの助言を求める必要がある。

 

13. 関連市場情報が不十分な場合は、「減価償却交換費用」という評価方式が採用されることもある。減価償却交換費用とは、土地の公開市場価格に建物とその敷地工事物の現行総交換費用を加算し、使用年数、状態、機能的及び環境陳腐化といったあらゆる要素に対する引当金を差し引いたものである。その結果、既存の不動産は新しい交換不動産よりも価値が低くなる。

 

14. 賃借不動産に対する実際の賃貸料(一時的賃貸料)は、市場の賃貸料と異なる場合が多い。こうした賃貸料については、2つのケースが特に重要である。

 

 

 

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