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費用効果

29. 費用効果とは、雇用創出のようなプロジェクトやプログラムにおいて、納税者が負担する費用に対する政策アウトプットの比である。プロジェクトやプログラムに対する公共支出は、政策目標を達成する上で費用効果が生ずることが重要である。費用効果を得るための最も基本的な条件は、支援を受けた事業が実際に実施されること、つまり追加性という判断基準が充足されることである。補助金が交付されたプロジェクトやプログラムでは、途中で打ち切られた場合や約束した雇用を果たせなかった場合にその補助金を返済させる契約を結べば、こうした補助金返済を確実に行わせることが可能となる。

 

30. 正味現在価値(NPV)がプラスになりそうなプロジェクトやプログラムでも、公共支出に対する純便益比が低くなる場合は、費用効果テストに通らないこともある。振興地域の雇用創出を目標とするプロジェクトでは、この目標達成面の費用効果を評価するのが通例である。その費用効果は「雇用1件当たりの費用」で表し、すべての振興地域で創出された雇用1件当たりの総公共支出(つまり、全部が追加プロジェクトに該当しないプロジェクト範囲を調整した上で、労働市場とアウトプット市場の総転移量)として算定される。正式の「雇用1件当たりの費用」範囲とその算定方法は、時に応じて設定される。

 

31. 通常の評価においては、所得税や法人税のような直接税の影響を考慮に入れる必要がない。しかし、外資系企業に対する英国の課税レベルが英国企業に対するものに比べかなり低いこともある。そうした場合には、そうした課税額の格差を租税支出として算定し、支援の一部とみなすべきである。(英国法人税として納付された分を除き、外資系企業の収益は、国の効率テストにおいて外国企業の収益と想定される)。

 

32. 産業振興プログラムが、雇用創出の他に、環境改善などの複数の目標を掲げている場合は、そうした他の便益(及び何らかの関連費用)も事前評価に含めるべきである。しかし、そうしたプログラムでは、アウトプットを生産する仕事には雇用1件当たりの費用制限が適用されるので、プロジェクトを分割したり、雇用1件当たりの費用を算定する前に費用の一部を除外(つまり計画のアウトプットに算入)したりするのは良くない。

 

33. 公共部門による「あらゆる」形態の支援を計算することが重要である。現金による補助金交付という形の支援では、その費用は明白である。しかし、その他の形の支援も多く、その実費がそれほど透明でないものもある。そうした一般的な例としては、参入補助金、エクイティ・ファイナンス、低利融資、低賃貸料による不動産賃貸、さらに土地、社会基盤、研修に関する支援や助言の無償提供などがある。無料または低料金による商品、サービス、資産の提供という形の支援は、その限界費用か市場価格のいずれか高い方の価値で評価すべきである。

 

34. 費用効果を検討する場合に該当する費用は、公共部門による総支出である。欧州連合(EU)の構造基金(structural Funds)による支援を伴う補助金や融資もある。必要な場合にはそうした支援も求めるべきであるが、英国の支援に加えて構造基金から受け取った資金は通常、費用効果の査定において英国大蔵省による補助金と同じ扱いになる。(もっと厳密な扱いが適する場合もある-本指針の本文第4.28項を参照されたい)。

 

 

 

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