14. 市場の失敗に関する診断は、関連した経験的データの評価も含め、問題とされる市場活動に基づいて実施すべきである。市場の失敗が市場行動の観測結果によるものであることを実証するためにも最も適切な説明になると思われる有力なデータを提示する必要がある。こうしたデータでは、市場の失敗が資源配分上の重大な間違いの原因になっていることを示す必要がある(つまり、市場の失敗やその機能不全の兆候のみを示し、その因果関係を示さないデータだけでは不十分である)。
15. しかし、資源配分上の大きな間違いの原因となっている市場の失敗を例証するだけでは、決して政府介入の正当な理由とはならない。管理費や政府介入の調整費も考慮に入れた上で、費用効果のある政府の介入により経済的効率性を高めることも実証しなければならない。それには何よりも、市場の失敗による結果よりもむしろその原因に取り組むことを政府介入の目的とする必要がある。
16. 市場の失敗を診断し、その改善政策を立てる公共部門の能力に限界があれば、政府介入の範囲も縮小する。
追加性
17. 追加性とは、公共部門の介入の結果として、政策目標である活動を大規模に実施したり、全面的にまたは早期に実施したり、または政策上重要な地域内で実施する活動範囲をいうものである。追加性は、常にプログラムの政策目標と対比して定義すべきである。
18. 追加性は、プログラム・レベルやプロジェクト・レベルで評価すべきである。追加性の評価方法は、プログラムの本質と目標に応じて異なってくる。工業支援や地域支援を伴うプログラムでは、追加性の評価においてプロジェクトの追加性、転換、置換も扱う必要がある。
19. 何らかのプロジェクトを援助なしではまったく実施できそうにない場合、それを(完全)追加プロジェクトという。しかし、追加性とは単にアウトプットが産生されるかどうかという問題ではなく、部分的なことも多い。たとえば、何らかのプロジェクトに援助が与えられた場合、以下の意味において追加性は部分的なものとなる。援助がなければ、
■そのプロジェクトを優先順位の低い別の場所で実施したかもしれない。
■同じプロジェクトの実施を延期したかもしれない。
■別のプロジェクトを実施したかもしれないし、同じプロジェクトの規模を縮小したり、低い品質基準で実施したかもしれない。
20. プロジェクト支援は、それを実施するのに必要な最低の支援しか受けるべきではない(つまり、申請された援助レベルには部分的な追加性を反映させる必要がある)。この最低支援量を越える超過分は「デッドウェイト(無意味なこと)」となる。
21. 転換とは、政府の政策により推進される活動の増加分が他の活動の減少分により相殺される程度をいう。たとえば、被支援地域の雇用創出のためにある企業を支援すると、その地域内の企業や別の地域の企業の雇用が減少することもある。