18. リスク移転を奨励する政策上の理由はいくつかあるが、その目的はリスクそのものを移転することではなく、リスクを最適に配分することにある。この最適配分レベルを越えた公共部門からのリスク移転は金銭的効率性の下落を招くことになる。
19. リスク形態は千差万別であり、その多くはプロジェクト特有のものであるが、以下に列記するリスクの種類は、大半の民間資金導入プロジェクトにおいて検討する価値のある一般的重要性を十分備えたものである。
■設計・建設リスク-コストと時間に対するもの。
■コミッション・運用リスク-維持管理リスクも含む。
■需要リスク(または数量・使用量)リスク。
■残余価値リスク。
■技術/旧式化リスク。
■規制とその他の類似リスク(課税、計画許可などのリスクも含む)。
■プロジェクト資金調達リスク。
20. 一般原則として、民間資金導入計画では(コストと性能の両面から)設計、建設及び運用リスクを必ず民間部門へ移転すべきである。その他のリスク移転の程度は交渉の問題となる。
21. リスク移転の交渉を成功させるには、プロジェクトに伴うリスクが供給業者の奨励策と資金調達費に及ぼす広範な影響、交渉で検討されるリスク移転の上限と下限などを資金調達者側が明確に理解する必要がある。
22. 事前評価の開始時に、管理職はプロジェクトに伴う個々のリスクをできるだけ多く明らかにする必要がある。また、できる限りそうしたリスクを計量化すべきである。その方法については別添Bにおいて検討している。同種のプロジェクトから得た過去のデータをこうしたリスクの計量化に援用できる場合もあれば、専門家の助言やプロジェクト実施者の経験の方が信頼性が高い場合もある。リスクを計量化し、その費用を算定したら、金銭的効率性を最適化するにはリスク管理をどう実施すべきかという点について評価を行う必要がある。
供給業者の選定と官民比較
23. 金銭的効率性が得られるような供給業者の選定過程では、通常、競合する民間資金調達の計画案の比較や、また、可能な場合には公共資金による代替案(つまり官民比較)との比較も含まれる。
24. 民間供給業者の選択は、少数入札者との交渉を伴う競争入札手続きの後に行われる。この手続きの結果、最良の民間資金調達の計画案が浮上してくるはずである。
25. 民間資金調達に関する政策指針で、官民比較が必要になる場合は、それを使うことになる。現行の指針は、「民間の参加機会と公共の利益」("Private Opportunity, Public Benefit"英国大蔵省、1995年、19-20頁)に記載されている。現在、官民比較を必要としない民間資金調達プロジェクトもあるが、この点については慎重に解釈すべきである。公共支出を伴わない独自資金によるプロジェクトや民間資金なしではプロジェクトを進められない合弁事業の場合は、当面官民比較を必要としない。しかし、合弁事業に対する公共部門の貢献度を評価する場合は、公共資金を投入できる代替的用途を調べる必要がある。