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別添Cの添付資料:実際の適用

 

1. 本添付資料では、中央政府内で現在採用している評価技法の適用例をいくつか紹介する。

 

通勤時間節減の評価

2. 中央政府内では、運輸省(DOT)が採用した時間価値評価方法1が定着している。この評価方法は、道路計画やその他輸送プロジェクトの事前評価に使用する各種価値を試算するために採用されたものである。この方法では、「雇用」時間と「自己」時間(つまり勤務時間と非勤務時間)にそれぞれ異なる価値を使用している。

 

3. 運輸省による「雇用主」時間の価値は、限界点における雇用主にとっての時間節減の価値である。雇用主が支払う人件費は、所得税込み賃金、雇用者と非雇用者の国民保険分担金(National Insurance Contributions = NICs)、定年退職費、その他関連人件費からなる。こうした人件費はかなり推定しやすいものだが、いくつかの評価問題が発生する。レジャー時間には職場への通勤時間も含まれている。

 

4. 非勤務時間節減の価値は、たいてい「明示的選好」技法により試算される。顕示的選好(つまり市場)状況が時間とコスト間のトレードオフを明らかにする機会は非常に少ない。また、そうした機会があっても、非常に多くの紛らわしい影響を及ぼすため、顕示的選好の価値を適正に測定できない。しかし、入手できる顕示的選好の価値範囲には、もっと適正に測定された明示的選好の価値が含まれている。家庭環境、所得レベル、勤務上の地位、通勤ストレスなどに応じて、価値は個人によって異なる。交通方式による格差はほとんどが所得に関係があるが、実際の評価は標準値に基づいて実施されている。この標準値は、所得レベル、家庭環境、旅行調査報告書(National Travel Survey)に示された交通方式に対比したすべての旅行者の加重平均値である。

 

5. 通勤時間やその節減の程度に関係なく、すべての時間節減の価値は1分当たりの同一節減率またはその一部で評価される。時間節減率が小さければ、従業員は生産寄与率を高められないという意見もある。多くのケースではこの意見は明らかに正しい。しかし、企業には通常(交通面だけではない)多くの面に一連の未使用の節減領域がある。はるかに小さい節減率でも十分効果を上げ、均衡レベルよりも高い生産寄与率が得られる。非勤務時間の節減に対しても同じような論拠が適用される。したがって、平均値が実際上最適の概算値であるように思える。

 

6. 高速道路の事前評価では、国民1人当たりGDPの想定伸び率に比例して旅行時間節減の価値が経時的に高まると想定されている。雇用主時間の場合は、こうした判断が比較的論争の的にはならない。しかし「自己時間」の場合は、所得と比較して時間節減の価値を増減させる傾向のありそうな多くの要因を対比させる。こうした要因としては、所得増大に伴う金銭の限界効用低下、勤務週の変化、旅行条件の質的変化などがある。

 

1 「通勤時間節減と事故防止の価値」、運輸省、1987年。

 

 

 

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