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7. しかし、商品が市場で売買されない場合に観測できるのは、せいぜい価格がない場合の需要量や供給量だけである。たとえば、死亡や傷害のリスクが増大した場合には市場が生まれない。しかし、たとえば任意支出や、危険の少ない職種に比べて危険の多い職種に対する高い賃金率を通して間接的に市場が生まれる。

 

8. したがって、そうした評価問題は、消費者の行動から明らかにされる「価格」や、消費者が示す支払い意欲から引き出される「価格」の推測を伴う傾向がある。多くの場合、前者の推測方法を「顕示的選好」方式といい、後者の方法を「明示的選好」方式という。顕示的選好方式は市場取引から得た証拠データに基づいたものである。そうしたデータとしては、たとえば、他の関連要素を一定に維持した場合の騒音公害と住宅価格の相関関係などがある。(こうした方法を説明する場合に、「ヘドニック価格」という用語を使用することもある)。通常、「明示的」選好のデータは、たとえばCVM(もしくは仮想的市場法ともいう)を使用して慎重に作成された質問書やインタビューを通して収集される。この両方法から得られた経験的結果に対しては、通常批判的な検証が必要になる。

 

9. 他の状況や同じようなプログラムから評価方法を借用する場合もあるが、そうした方法で推測した価値は特定の適用領域特有のものになりがちである。たとえば、さまざまな消費者層や顧客層の特徴は異なっており、生産単位に対する需要は他の商品やサービスの相対価格に左右される面もある。しかも、こうしたものは変動することもある。そうした要因は、価値を一般化できる範囲に制限を加える。

 

10. 非市場的財は、通常、供給における限界変動への人々の支払い意欲から評価するのが一番よい。また、非市場的財(自然環境やリクリエーション施設など)の損失防止費や移転費を参照することもある。この場合は、当然その価値の測定値は得られないが、その商品が支出するだけの価値があるかどうかという論議を中心に据えるための数字は得られる。また、過去の決定過程においてそうした財に付けた含みの価値を示す際の一助ともなりうる。

 

11. 唯一の方法しか使用しない唯一の研究から得られた推定値の信頼性は、評価しにくい場合が多い。たとえば、CVM(仮想的市場法)の質問書に答える回答者は矛盾した回答を示し、評価方式が個人予算の制約を十分考慮に入れていない場合もあるため、評価方式が信頼できないものとなる。

それぞれ異なる方法から同じような結果が得られる場合や、他の研究者が同じ研究を行って同じような結果を得る場合には、推定値の加重を増すこともできる。一般的には、点推定値よりも推定値の範囲を採用する方がよい。

 

12. 本別添の添付資料では、中央政府における価値評価技法のいくつかの用途について述べる。

 

価値評価できない影響の分析

13. 一般に受け入れられる影響評価方法がない場合でも、そうした影響を直接「計量化できない」ものとみなすべきではない。実際には、ほとんどの影響をその設定単位で計量化できる。たとえば、さまざまな騒音レベルの音量、持続時間、変動率に基づく騒音公害の計量化指数は多数ある。プロジェクトの前後に当該測定値を比較すれば、その影響を例証できる。

 

 

 

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