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別添C:価値評価を容易に行えない費用と便益

 

概説

1. 中央政府内で行う事前評価と事後評価のほとんどは、市場価値のない重要な影響に関するものである。主な評価結果の多くも同様である。また、たとえば環境、経済効率(経済効率に関する外的影響については、別添Eにおいて検討する)、政府のその他政策供給に関する間接的影響に関しても同様である。「持続可能な開発」という政策が一般に認められるようになるに伴い、可能な場合の環境的費用と便益の識別と評価はますます重要視される。

 

2. こうした影響を価値評価できる場合もある。だが、その評価方法は、政策決定の基準として一般に広く採用されているものに限られる。こうした事例としては、道路計画の費用と便益を算定する場合の労働時間とレジャー時間の評価に一般的に適用される。また、環境に対する特定の影響の評価や、たとえば何らかの公共アメニティの基準変更に対する人々の価値観の評価もある。この種の価値評価を大いに活用したものを「費用便益分析」という。しかし公共部門の事前評価と事後評価においても、費用便益分析が標準的な方法として採用されることはない。たいていは、計量的評価に基づき、時には質的評価のみに基づき、すべての非市場的費用及び便益を比較しており、価値評価を行わない。多くの場合は、これが最良の方法である。

 

3. 実生活の事前評価や事後評価では、すべての重要な要素に貨幣価値を付けることはまず不可能である。計量化できる影響や原則として金銭的に評価できる影響もあるだろうが、今のところそうした影響に適用でき、しかも一般に十分受け入れられている評価方法はない。最終決定の責任者が判断すべきもっと幅広い管理面や政治面の問題も必ず出てこよう。

 

4. こうした幅広い問題については、最終段階において重要な決定を下す前に十分考察するだろうが、本別添ではこうした幅広い問題は扱わない。しかし、たとえ市場価格がなくても、厳密な分析の枠組みの中で扱うことができ、しかもそうした枠組みの中でこそ最もよく扱える影響については、本書でも採り上げる。

 

5. 本別添ではまず、いくつかの影響を金銭的に評価でき、しかも費用便益分析に導入できる各種方法について説明する。次に、もっと包括的なマトリックス方式や影響記述方式について説明する。こうした方式を採用すれば、金銭的に評価できない影響でも、関連したトレードオフ関係として判断できるように設定することができる。最後に、こうした影響調査方式の下で、いくつかの影響を数値化し、加重し、選択肢のランク付けを行う方法について検討する。

 

費用便益分析に使用する非市場的影響に関する評価

6. 一般的に、「市場で売買される」商品の評価はいたって簡単である。通例、商品の需要供給価格に関する情報は市場から提供されるので、こうした市場価格を事前評価と事後評価の基準として使用できる1

 

1 例外的な場合としては、たとえば独占力や、相関関係のない外的要因により市場価格に歪みが生ずることも考えられるが、相関関係が必要かどうかについてはエコノミストに助言を求める必要がある。

 

 

 

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