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6. 感応度分析は、うまく編成し、明確に提示する必要がある。非常に重要な不確実要因や、ある方向の不確実要因が他の方向のものよりもはるかに大きくなるのを特に重視する場合には、各種の結果から最適結果を慎重に選定する必要がある。重要なリスクはすべて検討しなければならず、各種要素間の重要な関係も考慮に入れるべきである。たとえば、建物の潜在的「異常事項」(たとえば下層土の不確実要因)をすべて網羅したチェックリストなどは役に立つことが多い。場合によっては、建築家、測量技師、エンジニア、工業専門家といった専門家の助言も求める必要もある。

 

7. 各選択肢の計算を個別に実施できる場合もあれば、計算方法は非常に異なるだろうが、同じ変量をいくつかの選択肢に適用できる場合もある。

 

8. それぞれ異なる結果の確率を統計手法により客観的に試算できるプロジェクトもある。そうした例としては、治水計画における洪水のリスクや、事故や火災のリスクなどがある。必要なデータがないとか入手できないために、こうした方法で確率計算を行えない場合も多い。他方、過去のデータをほぼ常に入手でき、少なくとも広範な情報に基づいて判断を下し、それを感応度分析の採用とその結果の解釈に援用できる場合もある。商業保険の保険金が確率計算に役立つ指針となる場合もある。いくつかの重要リスクをまとめて無視することに比べれば、主観的確率を採用する方がよい。

 

9. 感応度テストにおいて推定値の信頼性を評価する場合は、たとえば建設プロジェクトにおける費用超過や期間超過に関する過去の記録や、需要予測の精度に関する記録といった過去のデータを利用するなりして、できるかぎり情報を収集すべきである。

 

10. 特定の変数が発生する機会に関するさまざまな条件設定が期待正味現在価値(NPV)にどんな影響を及ぼすかを示すのもよい。また、感応度分析において「悲観的」変量と「楽観的」変量を設定することで、各種変量をグループに分け、プロジェクトの進行責任者にこうした結果が発生する可能性を幅広く評価させるのもよい。

 

11. 何らかのプロジェクトや選択肢が実施する価値のあるものかないものかを判断する際に、重要な決定的要素が1つしかない場合もある。そうした場合に役立つ感応度分析方法は、この要素の価値がどの程度下落すれば(便益の場合)、またはどの程度上昇すれば(費用の場合)選択肢を実施する価値がなくなるかを見ることである。こうした価値を転換価値または転換点という。こうした転換点が設定されると、結果がこの転換点より悪くなる可能性を比較的評価しやすくなる。

 

シナリオ法

12. 重要な意思決定では、完全に構造化されたシナリオ法を使用できる場合もある。こうした「シナリオ計画」法では、個人の投資計画から総合的企業戦略に至るいかなるものでも、各種社会情勢の影響を調べる。シナリオは単なる予測ではなく、将来の政治経済環境について一貫した記述法である。投資計画の立案ではシナリオが役に立つ場合が多く、複雑な超大型プロジェクトにもシナリオを使用できる。

 

 

 

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