4.55 同一基準日までに、ある選択肢の割引便益の総計から割引費用の総計を差し引いたものが、その選択肢正味純現在価値(NPV)である。費用の面でのみ評価を行う場合は、割引費用の総計が正味現在費用となる。ただし、「NPV」という略語はこの種の費用にも広く使用されている。
4.56 現在価値に代わるものとして、費用または便益を計算して年間価値または「等価年間費用」として示すこともできる。たとえば割引率が6パーセントの場合、現在の合計額100ポンドは年1回13.59ポンドを10年間支払うことに相当する。最初の支払いは今から1年後に行う。つまり、10回の年間支払い額を合計すると、100ポンドの総現在価値となる。第4.61項で説明するように、等価年間費用は事業期間の異なる選択肢の比較に役立つ。また、資本資産の利用費算定方法としても役立つ。つまり、資産の資本価値は、資産の償却期間に渡る等価年間費用として表わすことができる。
4.57 別添Hの表は、それぞれの割引率における割引係数と等価年間費用の値を示すものである。別添Hでは、割引係数、現在価値、等価年間費用の算定式並びに特殊ケースに使用できるその他の割引算定式も示す。ほとんどのコンピュータ・ソフトウェア・パッケージには、同様の算定式が導入されている。
割引基準日の選択
4.58 割引のための基準期日の選択は通常余り重視されず、現年度を採用するのが普通である。しかし、分析全体に渡って同一期日を採用し、分析結果の提示時にはその期日も明示すべきである。実際には、1年間に発生する総額を後続年の中頃に下落するものとして処理するだけで十分正確な算定値が得られる。
4.59 支出が数年間に渡る場合は、初めて支出が発生する年度の中頃を基準にしてすべての費用と便益を割り引くと便利である。その場合、この基準年度を「0年度」、その後の年度を「1年度」、「2年度」...とすると、1、2、...年度に適用する割引係数は別添Hに示す通りとなる。
耐用期間の異なる選択肢の比較
4.60 代替案間の費用または便益を正しく比較できるのは、それら代替案が同一期間のものだけである。たとえば耐用期間が5年の設備Aと7年の設備Bを比較する場合は、5年後と7年後の間にどんな事態が発生するか(設備Aを選択した場合)、その両選択案が、7年後の費用と便益にどれほど異なる影響を及ぼすかを評価する必要がある。