4.61 異なる耐用期間を考慮する一つの方法は、何らかの設備が常に同様の設備に引き継がれるものと想定することである。この場合、等価年間費用(第4.56項を参照されたい)を採用すれば選択肢の比較が非常に容易になる。もう一つの方法は、設備の耐用期限前に事前評価期間が終了した場合の残存価値を試算することである。通常、その残存価値は、プロジェクトで使用される価値と推定市場価値のうちの高い方となる。その価値はその時点における簿価から概算できよう。建築物の場合は、資産の耐用年数の選択が特に重要になる(別添Fを参照されたい)。
物理的量の割引
4.62 金銭で表わせる費用または便益よりもむしろ、物理的量の経年的割引を行う方が適当な場合もある。この事例における唯一の一般原則は、使用する割引率を、同一評価において金銭で表わした費用と便益に使用する割引率と一致させる必要があるという点である。後者の割引率が6パーセントで、特定の物理的費用または便益の実質的金銭的価値が年1パーセントずつ年々上昇することが明らかならば、その単位費用または単位便益の割引率は5パーセントになる。別添Gでは、経時的に(一定の金銭的価値ではなく)一定の「効用」を持つとみなされた費用または便益を、6パーセントの割引率うち効用に対する時間選好に起因する部分として差し引けるかについて説明している。
4.63 物理的産出量と物理的費用の単位を同一割引率で割り引いて単位コストを算定する方がよい場合もある。この方法で算定した単位コストは、産出量にかかる場合にその割引率に等しい成果を生む一定価格である。しかし、この場合の生産量割引方式は、その産出量を達成するために必要となる一定価格を算定するための簡単式にしかすぎない。この算定方法には、受益者にとってその産出価値が経時的にどう変動するかという方程式が組み込まれていない。
代替的意思決定原則
4.64 中央政府の支出は、通常、その正味現在価値(NPV)または正味現在費用で評価すべきである。したがって、所与のプロジェクトにおける「意思決定」原則とは、金銭的に評価できない影響を考慮に入れながら、正味現在価値(NPV)をできるだけ最大にするか、正味現在費用をできるだけ最小にすることである。民間部門で広く採用されているあと2つの意思決定原則は、内部収益率と回収期間に基づくものである。
内部収益率
4.65 内部収益率(IRR)は、ある事業案の正味現在価値がゼロとなる場合、つまり割引便益と割引費用が等しくなる割引率である。何らかの提案を進めるべきかどうかという意思決定原則は、内部収益率(IRR)が適用割引率に比べ高いか低いかに左右される。純現在価値(NPV)がプラスとなる選択肢では、内部収益率(IRR)が割引率を上回る。この意味で、純現在価値(NPV)と内部収益率(IRR)に基づく意思決定原則からは、同じ解答が得られる。
4.66 しかし、内部収益率という基準は誤解を招くこともある。特に、内部収益率を採用する場合は、長期的な費用と便益を裁量的に低く評価する傾向がある。特異なケースとして、後年の純費用からまったく異なる2つの内部収益率が得られることもある。割引率を適正に設定すれば、内部収益率はせいぜい補助指標としての役割しかない。