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4.49 単に変動率を低下させるためにより高い期待費用やより低い期待便益を選択する価値があるかどうかを判断するのは、管理上の判断である。時には、予算管理を改善するために確実性を高めることもある。また、中央政府のプロジェクトには、大きなリスクと不確定要素を個人に負わせるものもあるが、こうしたコストは事前評価に反映させるべきである。(一般的に、中央政府の事前評価でリスクを許容する方法としては、割引率の調整は決して適正な方法ではない。割引率が高いほどリスクの高い選択肢が有利になるような代替的コストの流れを比較する場合は、特にそうである)。

 

可逆性

4.50 何らかの支出の影響は取り戻しがきく。しかし、その他の影響、つまり特に環境に対する影響の多くは実質的な意味で取り戻しがきかない。そうしたケースとしては、土地の排水や汚染物質の放出がある。取り戻しのつかない影響を及ぼすプロジェクトが、便益性の高い他の可能性を将来締め出すこともある。取り戻しのつかない事態により回復不能または破壊された資源が、後になって非常に高い価値に評価されることもある。たとえば、人々がほとんど訪れることがなくても、有名な史跡の損壊は、その史跡がそこにあったということだけで人々が享受する「存在」価値または「選択」価値を喪失することもある。したがって、事前評価では可逆性という要素も検討しなければならない。取り戻しのつかない重要な影響については、提案時に特に言及し、さらに研究調査を深めるに値する問題である。

 

4.51 事前評価におけるリスクの扱いについては、別添Bにおいてさらに指針を述べる。

 

割引

 

割引率の価値

4.52 中央政府においては、ほとんどが、実質割引率6パーセントの適用を受ける。その例外については、別添Gにおいて説明する。例外としては、海外援助計画に基づく工業支援計画やプロジェクトがある。

 

4.53 割引率は実質価値として表わされるので、名目的に(つまり現金)ではなく、実質的に評価可能な費用と便益にのみ適用すべきである。資本コストとして割引率を採用する場合は、事前評価において政府の投資金融借入金に対する利息の支払い額を明確に算定する必要はない。

 

割引係数、現在価値、等価年間費用

4.54 割引率を採用すると、将来の予測費用や予測便益の価値を現在から見た価値へ引き下げるという効果がある。誰かが現在の1ポンドと1年後の1.06ポンドを実質的に等価と見れば、年間割引率は6パーセントということになる。つまり、その者にとっては、1年後の1ポンドは現在の94.3ポンドにしか相当しない(1/1.06=0.943)。この数字0.943を「割引係数」という。将来の1ポンドに対する割引価値をその1ポンドの「現在価値」という。下表に示す数字は、割引率6パーセントにおいて1ポンドの現在価値が将来数年間にどのように下落するかを示すものである。

 

 

 

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