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4.38 実際上、付加価値税のような間接税の面で市場価格を調整する必要がある場合はごく少ない。所得税や法人税のような直接税、EUへ支払う輸入関税、営業税の面で市場価格を調整する必要がある場合はさらに少ない。こうした諸税は他の費用と同じように扱い、普通の方法で市場価格に算入すべきである。福利厚生(従業員向け公用車の私的利用など)に対する所得税は、他の給与支払費用と同じように扱うべきである。租税処理に関する重要な相違点の調整も含め、公共部門と民間部門におけるサービス供給面の比較については、別添Dにおいて検討する。

 

外部性

4.39 商品やサービスの生産や利用が、生産者にも利用者にも配分されない費用や便益を生むこともある。そうした費用や便益を「外部」費用または「外部」便益という。外部費用や外部便益をもたらす商品の消費や生産を奨励したり抑制したりするために、助成金や租税を利用するケースも増えている。こうした場合の租税や助成金は、原則として商品(またはサービス)を生産または消費するための費用の一部とみなすこともできよう。しかし、外部性を相殺するために租税や助成金を(部分的または全面的に)採用するかどうかを判断すべき場合もある。いかなる場合でも、代用課税法(第4.17項-第4.19項を参照されたい)のように評価に租税を採用するよりもむしろ、そうした影響を明確に定量化し、直接価格評価する方がよい。

 

偶発債務と解約費用

4.40 政府に偶発債務を負わせるプロジェクトもある。偶発債務とは、何らかの事態が生じた場合に将来支出義務が生ずる債務である。公共支出の管理では、プロジェクト開始前や契約前に偶発債務を慎重に評価し、その後も注意深く監視することが肝要である。

 

4.41 そうした債務支払いにかかる経済的コストも評価する必要がある。そうした場合の商品及びサービスの経済的費用は、しばしば「埋没費用」となる。それにはたとえば、事業が期待通りに行かなかったために完了前に減価償却する必要のある投資などがある。

 

4.42 契約を完了前に終結した場合に政府機関が支払う解約費用も、一種の偶発債務となる。当初案の評価では、そうした債務とその発生可能性も考慮に入れなければならない。また、その後の評価において契約を完了前に終結させるかどうかを評価する場合にも、検討しなければならない。しかし、解約費の支払い時に経済的直接コストとなるのは、契約終結により発生した将来の経済的コストとして支払う部分だけである。その一例は、特殊工場を完了前に解体する費用である。厳密に言えば、契約上の取決めを変更した結果生じた費用が契約者の負担となっても、検討しておくべきである。しかし実際上、検討を要するほど重要視されることは減多にない-しかも、契約者は通常、そうした偶発債務費をその契約価格の一部として回収する。

 

リスクと不確定性

 

4.43 評価では、リスクや不確定要素も費用と便益の推定値に算入すべきである。その評価結果が特定推定値に大幅に左右される場合は、その推定値を検討し、その信頼性をさらに高めることができるかどうかを検証すべきである。正味現在価値(NPV)の構成項目は、最も重要なリスクと不確定要素を評価しやすい方法で提示する必要がある。

 

 

 

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