4.23 費用と便益を一定の「総合」価格レベルで表わすとしても、特定価格が総合インフレ率よりかなり高い率や低い率で上昇する見込みがある場合は、この「相対」価格変動を費用と便益の計算に算入すべきである。たとえば、情報技術/情報システム(IT/IS)プロジェクトに使用される技術の実質価値は下落し続けるものと予測される。また、最適なビル暖房方法を検討する場合には、一般物価に対比した各種燃料価格の予測動向をも考慮に入れるべきである。同様に、長期的には実質賃金も上昇する見込みがある。民間融資契約では、RPIまたはGDPデフレーターのような一般的指数以外の何らかの指数化された計量法による支払いもある。建設契約に価格変動(vop)条項が盛り込まれている場合には、その契約履行中の費用も実質的に上下動する見込みがある。相対価格変動の予測に関しては、適当な専門機関と金融部門やエコノミストに問い合わせる必要があろう。
4.24 将来の費用と便益を名目価格(つまり現金)で表わすことができる場合もある。そうした場合には通常、こうした費用と便益に調整を加え、将来の予測金利変動による影響を排除すべきである。その調整方法としては、将来のキャッシュフローをGDPデフレーターの予測レベルだけ収縮する方法が通常採用される。(将来のキャッシュフローを収縮させるために関係サービス特有の指数を採用すると、相対価格の影響が不明確になり、他のサービスとの比較に歪みを与える恐れがある)。一般物価の影響を知るために名目価格を調整しない場合は、名目割引率を採用すべきである。名目割引率については、別添Eの第37項と第38項、別添Gの第4(v)項で検討する。
金融コストと経済的コスト
4.25 時には、経済的コストの推定値を得るために金融面の数字に調整を加える必要がある。その一例は公共サービス部門の従業員の経済的コストである。英国大蔵省の「手数料及び使用料指針」("Fees and Charges Guide" HMSO,1992年)に記載されているように、こうしたコストには給与コストだけではなく、退職金その他のコストも含まれる。こうしたコストすべてが予算担当部門に直接かかるわけではない。もう一つの例は、第4.16項で指摘したように、すでに保有している固定資産を利用する場合の経済的コストである。第4.17項-第4.19項でも指摘したように、まったく市場価値がなく、直接的金融コストもかからない経済的な費用と便益もある。
4.26 土地や建物の経済的コストは資本価値や年間賃貸料で表わすこともできるが、二重計算になるためその両方で表わすことはできない。土地及び建物特有の問題については、別添Fにおいて検討する。