2.33 費用と便益の詳細を隠蔽するために、割引を採用することは許されない。通常、割引は、総合的な純現在価値(NPV)を除いたその主要分野を示したり、各費用と各便益が経時的にどのように分布しているかを示すのに適している。
2.34 費用と便益を推定する場合は、将来に対する条件設定が必要になる。さまざまな条件設定の影響も考慮すべきである。それには、重要と思われる各リスクと各不確定要素に応じて条件設定の予測結果がどのように変動するかを明確に分析する必要がある。そうした結果の提示では、リスクや不確実性を生じそうな条件設定とその予測側面に重点を置くべきである。評価後に推奨できる一つの方策は、たとえば、支出案を最終的に提示する前に試案を提示するなり、適当な中断点においてそれ以上進めないという選択肢に対する審査の実施準備をすることである。
2.35 いかなるプロジェクトもリスクを伴い、そうしたリスクを負う者にとってはコストがかかる。特に、すべてが計画通りに進んでも、リスク発生の可能性を想定したプロジェクトにおけるあらゆる予想結果の平均値はコストを超えるというわけである。公共部門におけるリスク分析では、費用と便益における楽観的分析を排除すべきである。リスク処理の適任者にリスクを委ねたとき、金銭的効率性が高くなるという基本原則に基づいて、民間資金を伴う選択肢の評価にはリスク配分の包括的評価を導入する必要がある。プロジェクトに対する資金調達のリスクも含め、リスクの最適配分を行うことを主眼とすべきである。リスクと不確定要素については、第4.43項-第4.51項及び別添Bにおいてさらに検討する。民間資金に関連したリスク移転については、別添Dにおいて検討する。
(v) 評価結果を提示する
2.36 評価結果の報告書は、次の事項を総括したものとすべきである。
・目標、
・検討した選択肢、
・得られた評価結果、
・評価結果は最終的に管理や政策決定にどんな意味をもつのか。
2.37 支援分析では、評価及び条件設定の計算を支援するために各段階で追加情報を提供する必要がある。また、次の事項に関する情報も含めるべきである。
・短期的目標、中期的目標、最終目標と結果の因果関係
・評価を容易には行えない費用または便益
・費用または便益の発生時期に関する情報(たとえば10年後にピークに達する便益もある)
・純現在価値または純現在コスト(または等価年間費用)の主要な構成要素
・主要条件設定の変更結果に関する感応度分析
2.38 価格基準、割引基準日、割引率の選択などの詳細事項を記録することも重要である。支出計画にとっても、評価にとっても、また支出をその計画と対比して効果的にモニタリングするためにも、基礎価格は必要である。
2.39 評価結果の報告書には、通常、第3章で述べるように、その後の評価のために収集する必要のある情報に関する説明も付記すべきである。