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2.25 たとえば土地利用計画を決定する場合のように、いくつかの異なる住民グループや企業にそれぞれ異なる影響を及ぼす場合には、そうした影響がどのように分布するかを示す「マトリックス方式や影響表明方式」を開発することもできる。

 

2.26 多くの場合は、評価に何らかの分離式「財政的評価」を導入する必要がある。こうした事前評価としては、各選択肢に対する公共支出の費用と費用節減に関する事前評価がある。こうした事前評価を「国庫費用分析」という場合もある-支出団体は、その独自予算における各選択肢のあらゆるキャッシュフロー面も分析する必要がある。

 

2.27 売買取引の場合は、当然「商業的事前評価」が必要になる。この場合は、販売収入から利益を算定する。

 

2.28 評価を実質的に行なうには、重要な問題全体を総括する必要がある。つまり、金銭的に評価できない費用と便益の評価を行い、できればその定量化も導入し、重大局面が予想される場合にはできるだけ過去の経験に基づくリスクと不確定要素の評価も導入する必要がある。

 

2.29 ほとんどの事前評価では、それぞれの時期の費用と便益を比較する必要がある。便益が発生するのは、通常費用よりも遅い。

 

2.30 通常、金銭の受け取りは遅いよりも早い方がよく、請求書の支払いは早いよりも遅い方がよいというが人情である。インフレがない場合でもそうである。「明日の楽しみよりも今日の楽しみの方が価値がある」。こうした個人的な性向(つまり時間選好)は、貸付金と借入金の利率の違いで算定できよう。公共部門の場合でも、費用と便益の時期は遅いよりも早い方に重点が置かれる。通常、こうした尺度のウェー卜づけは費用と便益に「割引率」を適用して算定する。実質利率とは、現在の投資1ポンドの価値が時の経過と共にどれほど急速に上昇するかを示すものである。それとまったく同じように、割引率とは、今日の実質1ポンドの価値が時の経過と共に将来どれほど急速に下落するかを示すものである4。中央政府の割引については、別添Gにおいて述べる。

 

2.31 すべての費用と便益を金銭的に評価できるならば、望ましい選択肢は「純現在価値」(MPV)が最高のものを選ぶことである。純現在価値とは、割引便益と割引費用の差である。費用効果分析では、優先的選択肢として採択されるのは「純現行コスト」が最低のものが求められる。現在価値をプロジェクト期間全体に渡って一定した年間実質支出の流れに換算する方がよい場合もある。こうした支出を等価年間費用という。

 

2.32 費用と便益の延長期間が長くなるほど、また費用の発生時期と便益の受取時期の間隔が大きくなるほど、割引の影響は大きくなる。割引の仕組みについては、第4.52項-第4.63項及び別添Hにおいて説明する。実際にはほとんどの場合、ソフトウェア・パッケージや計算機を使えば、割引を簡単に採用できる。割引率表を別添Hで示す。

 

4 中央省庁では、後日支出予定の現金に対する利息を取得できないため、割引率をゼロにしなければならない。この点が論議の的になる場合もある。しかし、これは間違いである。いかなる年度であれ、いかなる期間であれ、公共支出の機会費用は原則としてあらゆる提案に対して同一である。

 

 

 

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