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2.9 公共支出上の制約により、検討すべき選択肢の最初の選択が制限されてはならない。効率化と説明責任強化のために設ける規制や目標は、採用可能な解決策の範囲を制限するものではない。支出上の規制や目標が最も費用効果のありそうな選択肢を排除するようならば、事前評価においてこうした規制や目標の存在を明確にする必要がある。

 

2.10 事前評価の過程では、元の選択肢に変更を加えたり、新しい選択肢を提案することもできる。選択肢の判別については、第4.2項-第4.11項において詳細に説明する。

 

(iii)各選択肢の費用と便益、リスクと不確定要素を判別かつ定量化し、できるかぎり価値を明らかにする

2.11 政府に関係があるのは、納税者、公共サービスの利用者、その他公共事業関係者の利益も含めた国益と国家的問題である。事前評価では、たとえば公共サービス提供面の競争増大から得られる便益といった長期的かつ間接的影響も含め、費用と便益を幅広く検討すべきである。

 

2.12 評価対象となる費用及び便益としては、通常次のものがある。

・社会資本の提供や公共サービスの実施にかかる費用。

・評価期間終了時における社会資本の残余価値。

・収入、コスト節約、非市場的影響という形で金銭的に評価できるその他のコストと便益。

・金銭的に評価できない費用、便益、影響の定量値または少なくともその説明。

 

関連情報を判別し、必要に応じて新データを収集すべきである。

 

2.13 支出案やその他の政策案が得をする者と損をする者を生むことも多い。そのため、各種の団体、経済部門、個人間で費用と便益をどう配分するかという情報が非常に重要になる。

 

2.14 評価において行政財産やその他の資源を評価する場合は、評価基準としてそれらの「機会費用」を採用すべきである。「機会費用」とは、最も価値が極大化する代替用途(評価中のプロジェクトで予定されている用途以外のもの)における資源の価値である。たとえば、評価を行う団体がすでに所有している行政財産は、予定事業に使用しなければ、他の目的に使用するなり、売却するなりできる。したがって、こうした行政財産の利用や保持は機会費用を生む。通常、こうした機会費用は市場価値から計算されるが、いくつかの重要な例外もある1)。

 

2.15 費用と便益の金銭的価値は、通常「実質値」で-つまり、評価実施時に適用される一般的な価格レベルで-表わすべきである。重要なのは実質の価値である。相対価格の変動を別にすると、インフレは一般的にあらゆる現金価格を同一比率で押し上げるので、一般物価レベルで費用と便益を表わす方が便利である2)。しかし、特定の財やサービスの価格がインフレ率に比べ大幅に増減する場合は、相対価格の変動も考慮する必要がある。この点については、第4.23項でさらに検討する。

 

1 多くの環境関係の費用と便益のように、ある種の重要な影響に対しては市場価値を適用できないこともある。また、価格に歪みがあり、市場が機能していない発展途上諸国や経済諸国では、市場価値自体の信頼性が低いため、援助計画のようなプロジェクトの評価には適用できない。

2 支出団体が将来の予算を現金で行ったとしても、支出案の評価は実質価値で実施すべきである。政府の現金会計予算では、将来の一般物価変動予測を考慮に入れる。評価において、名目キャッシュフロー予測値から実質価値への換算に使用する一般物価指数としては、通常GDPデフレーターが適している。適切なデフレーターの使用について疑問がある場合は、財政当局、エコノミスト、英国大蔵省に問い合わせられたい。

 

 

 

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