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5.4 氷監視に必要なパラメータ

 

海氷パラメータの記述については、WMOの海氷作業グループにより標準化された(WMO、1970,1985)。これは今日氷チャートを作成している全ての機関で使用している術語を定義している。その術語はかなり良く標準化されているが、氷チャートで使用されている記号は、ロシア、カナダおよびバルチック海の氷チャートの間で幾分異なる。WMO egg コードにおいて記述されている主要な氷パラメータは、

・氷密接度 (Ice concentration)

・氷の種類 (Ice type)

・氷の年齢または発達状態 (Age or stage of development)

・形状(すなわち、浮氷の大きさ)(Form (i.e. floe size) )

である。これに次のような特徴的な記号により記述される氷特性が加わる。

・表面の特徴(すなわち、背、峰)( Surface feature (i.e. ridges) )

・動き(Motion)

WMO egg コードはある範囲の氷域に対する氷の密接度、発達段階(厚さ)、氷の形状(浮氷の大きさ)を数値で表す。国立氷センターではWMO氷コードと図の記号が普通用いられる(巻末資料4)。しかし、ロシア北極水域のある海域と日本、中国では、その国のコードと図記号が用いられている。

WMO氷コードの主な問題は、それが氷海での航海に対して最適な全ての氷の特徴を述べていないことである。氷海航海が重大な関心事である国では、WMO氷コードに他の多くの氷パラメータが付け加えられている。

 

5.4.1 氷域と氷縁の衛星観測

 

全てのユーザーに必要な最も基本的な氷情報は、氷縁と氷で覆われた海域を割り出す情報である。このために数種類のタイプのデータが使用される。すなわち、AVHRR、SAR およびSSM/Iデータが幾らか定期的に用いられる。また、散乱計、レーダー高度計のような他のタイプのデータも情報を作成することができる。しかし、これらはオペレーショナルな監視には使われていない。

 

5.4.2 氷の種類の衛星観測

 

SARマイクロ波は、表面の粗度と海氷の誘電率に鋭敏である。誘電率は氷の表層に含まれる塩分濃度に依存する。多年氷に対しては、表層は大変低い塩分であるので(概して1%より低い)、ほとんどのSARのシグナルは体積散乱により生ずる。観測される必要のある氷の種類と状態が図5.3に描かれる。氷を分類する時に影響力のあるSARのパラメーターは入射角、周波数および偏波である。同じ種類の氷でもセンサーパラメーターが変わると、散乱波は大変異なって反射する。異なる種類の氷に関連した後方散乱波の強さに対するセンサパラメーターの依存性を決定するために、より多くの研究が必要である。ある曖昧さにもかかわらず、SARシステムは、雲と光りに対して独立であり、また高解像度を持っため、氷監視業務に対して最も重要な海氷の衛星観測手法である。

 

 

 

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