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2.3.4 85GHz channelの利用

 

本研究では、館山ら(1998)に基づいて、85GHzと37Ghzの射出率比ER(Emissivity Ratio)を利用してさらに疑似海氷域を低減することを考えた。このERを用いたアルゴリズムは主に海氷分類を目的とし、AMR(航空機搭載マイクロ波放射計)による観測結果をもとにSSM/Iへの応用を行ったもので、図2.9に示すような結果が得られている。ERでは海面における表面温度がキャンセルされるため、気温や日射等による密接度推定の誤りは軽減されるという効果が期待できる。ここでは、ER(37V/85V)が0.92未満となるときに海水域(Open Water)となる条件から、海氷域と海水域の区別に使用した(図2.10)。赤外領域に近い高周波である85GHzや89GHzは水蒸気による影響を受けるが、比較的水蒸気の少ない時期にはERの使用に特に問題はなく、それ以外の影響による疑似海氷域低減に比較的良好な効果が得られた。

この結果を、図2.11に示す。図2.8(b)と比較すると、完全ではないものの沿岸周辺(特に北海道付近)で疑似海氷域がかなり減っている(図2.19の海氷図も参考)。また、図2.12(a)〜(c)は、図2.1〜2.3と同一日の改良後の計算結果である。これらの図を見ると、先のWeather Filter改良の効果も含めて、ERによる効果が大きくでていることがわかる。

 

2.4 1998年2月の解析

 

ここでは、前述の1993〜1994年冬季の他に、1998年2月7日(日本時ではおよそ8日)についても計算し、結果の検証を行った。この日は、昨年の報告書に述べられているRADARSAT画像の日に合わせてあり、計算結果とこの画像と比較も行った。また、参考までに海氷観測を行う船舶(巡視船"そうや")やヘリコプターからのデジタル画像との比較も行った。

 

2.4.1 改良アルゴリズムの適用

 

図2.13(a)および(b)は、それぞれTeamアルゴリズムとBootstrapアルゴリズムを使用して計算された2月7日における海氷密接度分布である。図2.13(c)は、Bootstrapアルゴリズムを基にWeather Filterの改良やERを考慮して計算したものである。同様に、図2.14(a)〜(c)は、2月8日の計算結果である。

これらの図を見ると、特に2月8日のTeamアルゴリズムの計算結果(図2.14(a))には疑似海氷域がかなり多く発生し、オホーツク海およびその周辺海域については対応し切れていないことがよくわかる。Bootstrapアルゴリズムの計算結果についても、例えば2月7日(図2.13(b))を見るとオホーツク海東部および太平洋に疑似海氷域が存在するが、改良後の図2.13(c)では、北海道や東北地方の沿岸海域のものも含めてかなり除去されていることがわかる。

 

 

 

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