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また、前年度の報告では、既存のアルゴリズムを使用せず、19GHz単周波でも海氷密接度の推定はある程度可能であることを述べた。それらの結果を見る限りでは既存のアルゴリズム使用の場合と大きな違いは生じていないように見えるが、19GHzよりも22GHz、さらに37GHzの方が解像度が勝るほか、輝度温度は風や気温によって左右される等の理由のため、単周波よりも多周波・多偏波によるアルゴリズムを用いていく方が適切であると考えられる。

 

2.3.2 Weather Filterの改良

 

海氷密接度を推定する上で問題の一つとなるのが、風による波浪や大気中の水蒸気による疑似海氷域の発生である。元々のアルゴリズムにも水蒸気の影響による疑似海氷域を低減するためのWeather Filterが含まれているが、オホーツク海周辺は北極域に比べて蒸気量が非常に多いため、そのまま適用しようとしても十分とは言えない。そのため、本研究では図2.6および図2.7に示すようにBootstrapアルゴリズムにおけるWeather Filterのパラメータの変更を行った。

また、図2.8(a)は改良前、(b)は改良後の密接度分布である。例えば、図2.8(a)では北海道東方沖海上やカムチャッカ半島東岸海域に明らかに不自然な海氷域が計算されているが、改良後(b)ではかなり低減されていることがわかる。

 

2.3.3 Land Filterの検討

 

前年度の研究報告では、沿岸域付近に生じる疑似海氷域を簡単に取り除くために、長ら(1996)の考案したLand Filterが有効であると述べた。このフィルタは、3×3の空間画素内に1つでも陸域の情報が検出された場合には、中心の画素は陸の影響を受けて見かけ上、海氷密接度が増加していると見なし、その海氷密接度を3×3の中で最も低い値に置き換えるというものである。実際、このフィルタは、オホーツク海全体の経年変動を解析するような場合には大きな効果があるが、サハリン南部から北海道付近にかけての詳細な流氷分布を把握するというような小さいスケールの場合には沿岸域にある海氷を必要以上に過小評価することにつながり、必ずしも十分ではないと思われる。そこで、沿岸周辺の疑似海氷域を低減させることを目的に、以下に示すように85GHzデータの使用を検討した。

 

 

 

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