第2章 SSM/Iデータによる海氷解析技術*
2.1 海氷密接度推定アルゴリズム
本章は、DMSP衛星に搭載されたマイクロ波放射計によるSSM/Iデータを使用し、海水と氷の放射特性の違いから海氷密接度を推定するアルゴリズムについて調査、研究した内容をまとめたものである。海氷密接度推定アルゴリズムは、NASA Teamと Bootstrap(Comiso)の2つが良く知られている。ここではこれらのアルゴリズムについて簡単に説明してから、本研究の成果について述べる。なお、アルゴリズムの詳細はComiso et al.(1997)および前年度の報告書を参照されたい。
また、SSM/Iデータには19,22,37,85GHzの4つの周波数と、それぞれに水平および垂直偏波(22GHzは垂直のみ)の計7つのチャンネルがあり、周波数の高いものほど空間分解能は良い。しかし、85GHzのチャンネルについては、赤外領域に近い高周波であることから大気中の水蒸気の影響が考えられるため、一般的に海氷観測では19,22,37GHzのデータが使用されている。
2.1.1 NASA Teamアルゴリズム
このアルゴリズムはNASAのCavalieliらが開発したもので、マイクロ波放射計の37GHz帯および19GHz帯における海水域、1年氷(季節氷)、多年氷(1回以上夏を越した氷)の輝度温度の違いを利用したものである。まず、それらの特性を用いて以下に示すようなPR、GRを定義し、海氷密接度Cを計算する。なお、計算に用いられる各パラメータを表2.1に示す。