1.実施概要
交通ボランティア育成講座の趣旨
高齢者や障害をお持ちの方々にとって、たとえバリアのない安全な施設ができたとしても、そこに行くまでの経路は決してバリアフリーではないというのが現状です。また、目の不自由な人の中には、電車のホームから落ちた経験を持つなど、ハンディのある人の外出には相当な苦労が伴います。
鉄道駅などにおけるエレベーターの整備は年々進んではいますが、それでも高齢者や障害のある方々などにとって、ちょっとした手助けや介助が必要な場面はまだまだ多くあります。日頃、こうした人を見かけたとき、なかなか最初の一声をかけることができず、はがゆい思いをした人も多いことでしょう。この交通ボランティア育成講座ではできるだけ多くの人が「どうしました」「お手伝いしましょうか」とごく自然に一声をかけられるような人になり、快くサポートができるような、心のバリアフリーの推進を目指しています。
そのために、単にサポートの技術を学ぶためではなく、参加者全員がアイマスクや車イスなどを使って体の不自由な状態の困難さを体験し、サポートの重要性を身をもって認識し、より積極的にサポートができるようにしています。また、障害のある人々とのふれあいの中で、日頃彼らがどう思い、どう行動しているのか、その一端を理解してもらうようにしています。
実施に至った経緯
交通エコロジー・モビリティ財団では、平成7年度に交通ターミナル等において車イス使用者の垂直移動や視覚障害のある方々の案内・誘導および高齢者への介添え等を行う、交通におけるボランティアのあり方について、学識経験者、事業者の代表、障害のある方々の代表等で構成する委員会を設置し、関係者の意向調査、文献調査、モデル事業の実施等を行いました。その中で、ボランティアの確保が課題であり、その一つの方策として鉄道駅等において障害のある方々に対する介助の方法と、障害の疑似体験を実際に経験することにより基本的な介助知識の習得を図る交通ボランティア育成講座が提案されました。
これに従い、平成7年12月にJR市川駅において、モデル事業として交通ボランティア育成講座を実施したのを手始めに、平成8年度以降は首都圏と関西圏においてそれぞれ毎年1回ずつ育成講座を実施して、参加者の幅を広げているところです。