(4) 総括
上記のことから、フランス・ドイツの地方都市では、日本の地方都市と比べて、大量輸送システムが発達していることに加えて、大量輸送システムの中での高齢者・障害者への対応も進展していると思われる。更に、背景として、大量輸送(バス、路面電車等)にアクセスするための歩道等の整備が日本では遅れていることも影響して、大量輸送を利用する車いす使用者が、フランス・ドイツに比べて少ないものと思われる。
3. STサービス
STサービスについて、ナント、シュツットガルト、ベルリン、金沢の4都市について主に比較した(一覧表については、表5-9を参照)。
(1) 運営体制
ドアツードアを中心とするSTサービス車両の台数を比較すると、欧州各市とも金沢(3台保有)を大きく上回る台数を保有している。また欧州各都市では、STサービスの委託先として、一般タクシーの利用を組込んでいる(但し、フランスではナントのようにタクシー利用をSTサービスの中に組込んでいるケースは少ない)。また、運転手には給与が支払われる仕組みが取られており、金沢でのように、運転手が無償で従事する形はとられていない。もっとも、ドイツでは、良心的兵役忌避者(連邦政府より一部給与が支払われる)を運転手として活用している例が見られる。
(2) サービス内容・実績
金沢市におけるサービス内容と比べた場合、運営時間の差はあまりない。方、通勤への利用を認めるかどうかは、欧州都市でも対応が分かれている。ナントやベルリンでは認められているものの、シュツットガルトでは認められていない。
サービス実績については、表5-6に示すとおり、ベルリンにおける利用者数が圧倒的に多い。ナント、シュツットガルトがこれに続いている。欧州との比較では、金沢における利用者数は依然として少ないことが確認された。