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この結果、人口1人当りでみた負担水準は、サービスの充実度合、利用量に対応して、ベルリン、シュツットガルトが金沢を大きく上回る結果となっている。一方、ベルリンとシュツットガルトとの間でも財政負担額は約3倍の差がある。

 

表5-7 都市別にみた、STサービスに関する市財政負担

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(4) 総括

ベルリンでのSTサービスは欧州でも例外的に充実しているケースであるが、それを別にした場合でも、日本でのSTサービスは、ドイツ・フランスでのそれに比べて、質量ともに遅れており、今後の拡充策をきっちり計画すべき時期に来ていると思われる。

 

4. ドイツ・フランスと日本との違い(財源・政策)

 

ここでは3点について確認しておきたい。第1に、フランス、ドイツでは、交通に関して各都市が有する財源が充実している点である。具体的にフランスの交通税、ドイツの石油税がこれに該当する。また、ハイデルベルグでは、水道・ガス事業での収益を公共交通の整備に充当している点も注目される。第2に、フランス、ドイツでは、公共交通を運営する事業体に対して、効率的運営が要求されているものの、運賃収入で運営費用をカバーすることが要求されていない点である。設備費用の負担は原則自治体であり、運営費用の半分程度を運賃収入で賄い、残りは自治体負担となることが多い。第3に(この点が最重要であると思われるが)、高齢者・障害者に関する「交通権」が法律等で認められており、その結果、交通に関して、高齢者・障害者がその要望を反映させる機関が正式に設けられている点である。例えば、ナントでは、高齢者・障害者の生活環境に関する専任の助役がおり、かつ、障害者との会合が定期的に開かれている。或いは、イルドフランス圏では、パリ市助役が政治的イニシアチブを取る形で、公共交通の改善に取り組んでいる。その意味で、各市において、トップダウン方式で、高齢者・障害者の交通環境を整備していく姿勢が非常に重要である。日本でも、運輸省などの支援の拡大と併せて、地方都市が自律的に高齢者・障害者の交通環境を整備していく努力がこれまで以上に求められよう。

 

48 金沢市社会福祉協議会「平成10年度事業計画書」より。但し、一定以上の障害者に支給されるタクシー券に対する市負担額は含まれていない。

 

 

 

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