4] 交通事業体
イ.資本構成
フランスの地方自治体は、通常、公共交通を外部に委託することになっている。また、1994年からは外部委託を行う場合、競争入札が原則となっており、この入札条件の中には移動制約者のアクセス確保も含まれている。ナントでは、ナント交通事業体(SEMITAN:Societe d'Economic Mixed des Transports en Commun de l'Aggromeration Nantaise)がDISTRICTから委託を受けて、公共交通を運営している(DISTRICTとの間で5年毎に入札・契約更改が行われる)。SEMITANは1979年に設立、混合経済体と呼ばれ(日本の第三セクターに相当する)、持ち株構成は、DISTRICT 65%、ナント商工会議所10%、商業銀行10%、トランセット((政府系金融機関フランス預金公庫(CDC)の子会社)14.95%、その他0.05%となっている。
ロ.運営形態
車両、資機材全てをDISTRICTが所有し、SEMITANに対して無償貸与する形となっている。
DISTRICTは、LRTやバス等の公共交通について、運転本数等の条件を公表し、入札により交通事業体を選定している。
一方、落札した交通事業体は、DISTRICTが提示した条件に対して原価を提示するが、差額がある場合には、その差額を補填されることになっている。
また、SEMITANは、DISTRICTの事業開発(新型車両の購入や路線の拡充等)に対してアドバイスすることとなっている。例えば、DISTRICTからの依頼を受けてSEMITANが新規路線の事業性を検討し、その検討結果を踏まえてDISTRICT自身が新規路線を決定していく。
ハ.財政援助
費用を大きく下回る水準に運賃が設定されていることから、SEMITANの赤字分がDISTRICTから自動的に補填される仕組みとなっている。補填の財源は、DISTRICTの交通税収入(Le Versemont de Trans)7で、DISTRICT内にある社員10人以上の企業が支払うことになっている。
7この制度は、フランスの各地方自治体の判断で行われている。1994年度の例では、地方都市全体の公共輸送事業予算のうち、交通税収入が約4割を占めており重要な財源となっている。主に公共輸送サービスの改善、拡張等に利用されている。