日本財団 図書館


3.「高速船対応のレーダーは新規に開発が必要となる」ことについて

 

一般的なレーダー装置は、レーダー電波を物標に向け放射し、物標からのその反射波を受信し、その到着時間によって物標までの距離を求めるものであり、物標の方位はそのときのアンテナの回転角度から求めるものである。

また、レーダー装置は、少なくとも標準的な物標の移動速度に基づいて決定された回転数でアンテナを回転させながら、監視領域の物標に所定の送信パルスを所定のタイミングで放射して、受信パルス(以下エコーという)を受信し、そのときのアンテナの単位角度当たりの微少時間内のエコー数(以下ヒット数という)を積算し、積算値に応じて物標を検知し、アンテナの回転角度およびエコーの到達時間によって物標の位置を知らせるものである。

このアンテナの回転数を速くすると、物標の検知でアンテナの単位角度当たりの微少時間内のヒット数が少なくなり、相対的にS/N比が劣化し、安定して物標の検知が困難となる。そこで、このような相反する要素をバランスさせてアンテナの回転数が決定される。

既設レーダー装置の基本的な性能検討は東京湾システムで運用実績のある14GHz帯高分解能レーダーを基準としておりレーダー系基本性能諸元などはつぎのとおりである。

 

アンテナ回転数:毎分10回転 12ノットで航行している船舶の追尾を基準としている

繰り返し周波数:3KHz   なお、レーダーから船舶までの距離は10kmとしている

水平ビーム幅:0.25°   実測の実効的な距離分解能が30〜45mによる

ヒット数:12.5      東京湾と同程度に保つため回転数を毎分10回転とした

(最多速力の12ノット前後の船舶を確実に追尾する為)

 

これらレーダー系基本性能諸元は東京湾システムでの運用実績から最適設定と考えられ簡単には変更することはできない。

すなわち、高速船対応レーダーには従来技術のレーダーをそのまま利用することはできない、また従来技術のレーダーアンテナ回転数を変更などして簡単に対応することもできない。

 

従って、高速船対応のレーダーは新規に開発が必要となる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION