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(3) 現状での追尾限界

 

現在、各海上交通センターのレーダーによる船舶の追尾限界に関する代表的な性能はつぎのとおりである。

 

追尾可能な船舶の最高速力:約35ノット(既存の各海上交通システムでの平均的な仕様)

追尾出力目標(最大):300目標/約6秒

 

海上交通センターのレーダー映像処理による追尾可能な船舶速力は約35ノットまでとなっているが、当時、それ以上の高速で海上を航行する一般船舶が存在しなかったためと思われる。

 

いま、レーダーのアンテナ回転数を毎分10回転とすると、レーダーは6秒ごとに物標を捉えることになる。物標の速力を35ノットとするとこの6秒の間に船舶は約108m移動することになる。位置が108m以上離れるとその他の船舶の位置と取り違えるなどして位置の相関が得られず追尾できないということになれば、35ノットが追尾できる船舶速度の限界ということになる。

 

この約108mという値は、管制船舶を3000トン以上とした場合に、船体長の平均は約100mでありこれらの船舶が航路を航行中には例えば追い越し時においても約110m以下には接近しないという過去の統計値などを基に設定考慮されたもので、今後も安易に変更できる値ではない。

 

既設の各海上交通センターのレーダーでは、例えばレーダーアンテナ1回転毎に追尾している船舶で前回観測時に求めた今回の予測位置と今回観測して得られた実測位置との位置差が約108m以上となる(すなわち、約35ノット以上で航行している)高速船を安定して追尾することは困難であり原則的には追尾することができない。

 

追尾出力目標(最大)は、当初200目標/6秒であったが、その後、改善され300目標/6秒となり現在に至っている。従って、現在では6秒間に300目標までしか追尾することができない。

 

 

 

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