I 調査研究の概要
第1章 調査研究の概要
1 調査研究目的
我が国では、国内で消費されるエネルギー源のほとんど、食料の約7割、綿花、羊毛など衣料及び鉄鉱石、銅鉱石等の工業製品の原材料の大部分を海外から輸入し、これらの輸送の大部分を担っているのは船舶である。
外航貨物船の高速化は、1960年代にもみられ、速力30ノットの船舶が建造されたが、石油ショック以後、燃料効率が悪く高コストにより競争力を失い、省エネルギー化への改造(最高速力30ノット、航海速力26ノット、燃料消費量220トン/日〜航海速力20ノット、燃料消費量74トン/日)や外国においては、軍用船に転用されたように高速化の動きは一時沈静下した。しかし近年、製品の高付加価値化、生産拠点の国際的な広域化が進み、これら製品を大量に、かつ高速で輸送するなど運航能率の向上が求められること、また、運航スケジュールを遵守する必要のあるコンテナ船は高速化の傾向にあり、既存船でも20〜25ノットの高速船が多くなっている。
さらに、超高速船「飛翔」の実用化実験が行われたように、2000年初頭には、高速貨物船及びカーフェリーの実用化が期待されている。
しかしながら、従来の海上交通システム(VTS)における海上監視の中核技術であるレーダーでは情報取得の時間の間隔が長いため、このような高速船に対する監視においては、高速船の変針時にその位置・針路などを十分に把握することはできず、他船に対して的確な情報提供ができない状況である。
このような状況から、船舶交通のふくそうする海域における高速船の動静を確実に把握するための最良なシステムの調査研究を早急に行う必要がある。
システムとしては、レーダー空中線を改良し、船舶の位置情報量を増大させる方法やDGPS等による船舶位置情報を従来レーダー情報に追加する方法等が考えられる。
本調査研究は、これらを勘案し、我が国の海上交通システムに最適で経済効果の高いシステムの調査研究を行うもので、平成10年度は最適方法の調査研究を行ったものである。
2 調査研究項目
2.1 資料の収集
現状での追尾限界、高速船の運行状況・操船性能等に関する資料を収集した。
2.2 環境条件の変化、法的環境の把握、問題点の抽出を行った。
1] 海上輸送の高速化動向の把握
2] 航路の速度規制の把握
3] 電波行政上の規制の把握
4] これらの問題点の抽出