まえがき
この報告書は、平成10年度において財団法人日本航路標識協会が財団法人日本船舶振興会から補助金を受けて実施した「船舶通航業務における高速船の監視方式調査研究」の成果を取りまとめたものである。
我が国における貨物輸送は、その大部分を船舶が担っていることは周知のことであるが、近年、製品の高付加価値化、生産拠点の国際的な広域化が進み、これら製品を大量に、かつ高速で輸送するなど運航能率の向上が求められて、運航スケジュールを遵守する必要のあるコンテナ船は高速化の傾向にあり、既存船でも20〜25ノットの高速船が多くなっている。
さらに、超高速船「飛翔」の実用化実験が行われ、その後、「希望」と改称され、清水、下田間にカーフェリーとして運航しているように、2000年初頭には高速貨物船及びカーフェリーの実用化が期待されている。
また、旅客船の世界では、すでに、関西海上空港へのアクセス等で見られるように船舶の高速化が数年前より実用化している状況である。
しかしながら、従来の船舶通航業務(VTS)における海上監視の中核技術であるレーダーでは、このような高速船に対する監視において情報取得更新の時間の間隔が長いため、高速船の変針時にその位置・針路などを十分に把握することができず、他船に対して的確な情報提供ができない状況である。
このような状況から、船舶交通のふくそうする海域における航行船舶の安全を図るため、高速船の動静を確実に把握するための最良なシステムについて調査研究を実施した。
その対応策案として、新方式のレーダーにより船舶の位置情報量を2倍取得する方法等が検討された結果、本年度は船舶通航業務システムへの適用方法をまとめることができた。
さらに、今後船舶通航業務システムにおける監視方式の円滑な移行、展開について調査研究を行う必要があると考えられる。
平成11年3月
船舶通航業務における高速船の監視方式調査研究委員会
委員長 林 尚吾