3. 交流事業の効果
イルカウォッチングに訪れる観光客数は、平成5年当初は年間3,219人であったが、平成6年20,549人、平成7年30,700人、平成8年34,756人、平成9年38,997人と、年々増加の一途をたどり、昭和41年の天草五橋開通以来の天草観光の主役として、全国的にクローズアップされるに至った。
客層も、熊本県内のみならず、福岡・関西圏域にも及び、宿泊客も大幅に増加し、天草の母都市・本渡市のみならず、近隣市町にも波及効果をもたらしており、五和町でも新たに5軒の民宿が開業している。
五和町においても、通詞島をターゲットに受入れ体制づくりを進め、平成9年4月には交流ターミナル施設としてふれあい浴場(ユメール)を建設、平成10年4月には食材コーナーを増築オープンさせた。
平成11年春には、新エネルギー施設である風力発電所を設置する予定であり、通詞島は“自然にやさしいイルカの島”として生まれ変わろうとしている。
このように、イルカウォッチングは、地元漁民やウォッチング業者等を含めた地域に活力を与えただけではなく、“山の観光地”阿蘇に対し、天草を“海の観光地”として決定づけ、熊本の観光に多大な効果をもたらしている。
4. 交流事業の問題点と今後の展望
観光客の増加と相まって、イルカウォッチング業者も増え、今では天草島内と対岸の長崎県島原半島を合わせ19業者となっている。
多いときには30隻ものウォッチング船がイルカに集まるという状況であり、イルカの生態系への影響や、裸潜り等漁業者とのトラブル、一般船舶との事故等が心配されるところである。
このような問題を解決するため、五和町では県の支援を受け、平成8年からイルカの生態調査を行うとともに、地元のウォッチング業者間でも自主ルールを策定し規制に努めているが、まだ十分遵守されていないのが現状である。
今後はウォッチング業者のみならず、ウォッチング船主に対しても、イルカの生態についての研修を行い、新たな自主ルールを定め、観光という視点だけでなく、自然環境を守るという考え方に立ち、永遠にイルカが住める美しい海を残すため、「人とイルカが共存する環境にやさしいまちづくり」を進めていきたいと考えている。