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事例42 熊本県・矢部町(人口13,539人 面積296.42km2)

〜迫田オーナー制度〜

 

1. 交流事業の契機

管地区は矢部町の東部に位置し、九州山地の裾野に広がる棚田の景色と山里の風景が訪れた人々の心を和ませてくれるところである。矢部町内でも交通の便の悪い山間部にあり、戸数約90戸・高齢化率32%の過疎の集落であるが、昭和47年に地区の全戸が加入する団体として、管地域振興会が発足した。その後、平成11年度完成予定の「鮎の瀬大橋」の建設をきっかけに、過疎化・高齢化に歯止めをかけ、自分たちの住む地域を自分たちの手で作り上げるため、住民一人一人の知恵や意見を出し合う場として、平成7年に振興会の下部組織として実行委員会を発足し、様々な取り組みを行ってきた。

こうした状況の中で、米の減反政策の始まりと共に集落内には休耕田が増えていったことから、荒廃していく農村風景と集落機能を維持していくため、高知県檮原町で行われている「棚田のオーナー制」を視察し、地域の生き残りをかけて「迫田オーナー制」に取り組むこととなった。

 

2. 交流事業の経過・概要

取り組みにあたっては、まず地域をよく知ることが大切であるということで、地域の子供達を交えウオッチングを実施し、それをもとに地域の将来像を描いた上で「自分たちで行うこと」「行政にお願いすること」を整理し、自分たちでできることを主体的に実行に移している。平成7年12月には、地元の地域づくりの意気込みを町内外に示すため、地域住民の心を一つにした取り組みとして、地元の夫婦岩に重さ1.2t、長さ80mの大しめ縄を住民のべ500名の手作りで架け、併せて案内板の設置や展望所の整備を行った。

平成8年度からは、農村の原風景の保全と都市との交流を目的に、都市の住民に休耕田を貸し出す「迫田のオーナー制」を実施し、年間を通じて農作業を体験してもらい、菅地区の持つ伝統、素朴な人間性、山里の自然というものを、地域住民とのふれあいを通じて提供している。こうした活動の中から、菅地区の子供達全員がオーナー家族のもとへホームステイを行うなど、家族ぐるみの交流へと発展している。現在オーナー家族は17組。

 

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田植え作業

 

これと同時に、県のアドバイザー派遣事業を活用し、住民総参加のワークショップによりアドバイザーの助言を受けながら、住民自らで地域のコンセプトを「山里のやすらぎ」と定め、この理念に基づく地域の特産品づくりの実践として、地域資源を活用したメニュー「菅の朝ごはん」の試作などを行っている。また、地域の情報を発信するため手作りの新聞「かけはし」を毎月発行し、最近ではオーナー家族から菅地域へ『山里通信』として都市からの情報誌が発行されている。

 

 

 

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