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事例38 福岡県・矢部村(人口1,952人 面積80.46km2)

〜杣の里交流事業〜

 

1. 交流事業の契機

福岡県でも最も過疎化の激しい矢部村における「杣の里交流事業」は、平成元年に都市との交流により地域の活性化を図る目的で始まった。

昭和30年代には6千人の人口が、平成元年には2千4百人となり、このままでは廃村になるといった危機感が、当時の村長をはじめ議会でも話題となり始めた。昭和62年から始まった国土庁の「リフレッシュふるさと推進モデル事業」への取り組みの中で、当初は自然環境を利用した観光的な施設を考えていたが、特段の観光資源はなく大規模投資も不可能であること、しかしながら昔から八女林業の中心地で「杣人(そまびと=きこり)」としての営みが盛んな土地であったこと、また、矢部川の源流地で渓流など水資源が豊富なことから、「秘境・杣の里渓流公園」という都市との交流を主眼とした拠点施設作りに取り組んだものである。

平行して生涯学習の一環として「村を考えるシンポジウム」も開催されるようになり、地域活性化に関する村民の気運も高まってきた。

都市との交流事業には、矢部村ならではの「人」「自然」「文化」を活用するということで、その後「都市との交流」「自然との共生」「文化の創造」といった視点で事業を展開するようになっている。

 

2. 交流事業の経過・概要

平成元年にオープンした杣の里渓流公園には、レストラン、陶芸・草木染め・木工のクラフトセンター、宿泊施設をはじめ、渓流に架かる遊歩道吊り橋、釣り場などを整備。運営には、村をはじめ村内の各種団体およびJR九州など村外の企業5社からなる第三セクター方式を採用している。また、特別村民制度(名称ソマリアン)を導入し、個人会員、法人会員を募集した結果、「杣の里渓流公園」には年間3万5千人が訪れるようになった。

杣の里渓流公園を核に村の森林組合、商工会、JAの各種団体や青年団、婦人会などの交流事業が展開されるようになり、自然を活用した多種多様な企画で、大学のゼミグループや矢部川下流域との交流、都市ふるさと会員や一般会員との交流などが実施されている。

平成3年には、いのちの水を生み出す森の大切さと木を愛するこころを育てようと、木に関する絵や詩を募集して「世界子供愛樹祭コンクール」を開催、諸外国からも応募があるなど一種の国際交流にもなっており、受賞者の記念植樹による「友情の森」が杣の里渓流公園にできつつある。

また、平成4年には村の情報発信基地として、福岡市天神に「アンテナショップ」を開設。普段は特産物として開発した地元の食材を使った「ソマリアンカレー」ショップとして営業し、週1回の青空市場も開催している。

 

3. 交流事業の効果

杣の里渓流公園ができ、交流事業の取り組みが村の住民に誇りと自信を持たせ、特産物生産グループの結成や住民が交流イベントの開催に積極的に参加するようになり、村に活力が出てきた。若い者が杣の里渓流公園で働き、雇用の場にもなっている。

 

 

 

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