事例34 山田県・秋芳町(人口6,958人 面積114.97km2)
〜国内外芸術家招待事業「交流の館」〜
1. 交流事業の契機
本州の最西端山口県の西部中央に位置する秋芳町、人口7,000人の観光と農業の町。
農村であっても、一流の音楽や舞台芸術にふれたい。文化のない所には人は住めない。と、文化による町づくりを始めた「文化ぐる一ぷラピエの森」。豊かな自然の中に新しい文化ゾーンの創出をめざした。
東京から離れていても、世界最先端の音楽を学びたい。若い音楽家を自らの手で育てたいと、県内の高校の若手教師で結成された「山口県20世紀音楽の会」。平成元年8月、国定公園秋吉台で、第1回秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティバルを開催した。
それぞれ異なる目的で活動をしていた2つのグループは、やがて相互に活動を支援することでより大きな事業を展開できることで意見が一致した。町及び2つのグループを中心にした芸術活動の展開は、その活動の拠点を必要とし、内外の芸術家の長期間の滞在と活動に対応するため、施設の整備が急がれた。幸い元医院で明治45年に建てられた広大な屋敷を借り受けられたが、改造には2,000万円近い経費を必要とした。平成4年のことである。
2. 交流事業の概要と経過
町内における新しい芸術活動の展開を推進していた町は、活動の拠点と創作の場の整備の要請を受け、整備事業(ハード)は町、活動支援(ソフト)は文化グループが担当することで新規事業として着手した。
1) 事業計画
・内外の芸術家に創作活動の場として館を無料提供。期間はおおむね3ヶ月以内。
・滞在中の創作活動、生活については文化グループが支援。
・滞在する芸術家は、芸術に触れる機会を町民に提供することが条件。
(演奏家-コンサート、美術家-作品展等、その他文化講演会、学校・公民館の事業を通しての交流、民間グループ団体との交流)
2) 館の整備
・内外の芸術家の長期滞在型の施設として、生活に必要なバス、トイレ、キッチンを様式に整備し、レッスン室(アトリエ)を改造併設、ピアノ(グランド1、アップライト1)など芸術活動に必要な備品、生活備品を整備。
・居住空間、座敷、庭は和式として改修。
・ 平成5年3月、事業費1,650万円で完成。
3) 事業の経過
平成5年の開館以来、交流の館の滞在者は音楽家、画家、陶芸家など、ドイツ、イギリス、アメリカ、ベルギー、韓国から30数名に及び、地域での生活を中心とした町民との交流、公民館・学校を通じての交流、コンサートや展覧会での文化交流、生活や創作活動での交流が続き、交流の館で完成した音楽、美術は数百点を数える。
また、国際音楽セミナーは現代音楽のアジアの拠点として発展して、世界へ新しい人材を送り出し、また、多くの世界的レベルの音楽家が集う場所となった。
さらに、これらの活動を支援するため国際交流員の招致も行っている。