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事例23 愛知県・足助町(人口10,400人 面積193.27km2)

〜足助町福祉センター「百年草」小さな足助の試み〜

 

1. 交流事業の契機

足助町は、193.27km2ある町土の約87%が山林である。県下でも第7番目という広大な面積を有しながらも、人口は1万300人余と小さな町である。

江戸時代、足助の町は伊奈街道の宿場町として、また多くの商家が集まる商業地として栄えた。しかし、明治40年に国鉄中央線が開通し、宿場的機能は失われていった。特に昭和30〜40年代にかけて過疎化が進み、町の活力低下が危惧されている。現在、過疎町村で盛んに叫ばれている高齢化問題は、当町にとっても例外ではなく、高齢者対策が町の大きな課題となっている。

反面、大正末年に町民が金になる杉・檜を伐採し、もみじを植えて造りあげた「香嵐渓」が、現在は東海随一といわれる紅葉の名所となり、毎秋多くの観光客が訪れるという観光の一面もある。

そこで本町では、高齢者対策と観光の機能を併せ持たせた『福祉センター「百年草」』を、平成2年10月にオープンさせた。

 

2. 交流事業の経過・概要

「百年草」という名前は、平成2年が町政施行百周年にあたることと、「足助にある山野草を愛と慈しみの心で育てていくように、そして雑草のように元気で100歳まで生きるお年寄りになってほしい」という願いが込められている。

「百年草」には、『保険福祉課・老人福祉センター(特A型)・在宅老人デイサービスセンター・レストラン&ホテル・浴場・喫茶・足助ハムZiZi工房・Bakeryバーバラはうす』が併設されている。一見、足助の町に不似合いな冷たい印象を与えるモダンな鉄筋コンクリート3階建ても、足助町山草研究会の手によって和の花で彩られ、清楚な息吹を漂わせている。内に入るとふんだんに使われた木が温かく迎えてくれる。レストランには若者や観光客に混じりナイフとフォークでフランス料理を食するダンディーなおじいちゃんとおばあちゃんがおり、風呂上がりに喫茶で一杯やっている人や、デイサービスを受けている人もいる。

「百年草」の根底に流れているのは、“ノーマライゼーション(共生)”の精神である。健康な人や健康を害している人、若者から観光で訪れた人々…様々な人が平等に気軽に利用し、ワイワイがやがやできる交流施設を目指した。そうした人々との交流から笑顔や喜びが生まれ、新たにお年寄りの生きがいも生まれてくる。従来、福祉センターはお年寄りだけが利用するものという、ともすれば暗いイメージが強かった。しかし、真に安らぎと生きがいに満ちた生活を送るには、自助・自立の精神で、その人の能力を生かした仕事場と、様々な人との交流による刺激が大切である。

元気なお年寄りの就労の場として、「足助ハムZiZi工房」「Bakeryバーバラはうす」がある。「ZiZi工房」ではハムの製造・販売を行っており、 1年間かけてハムの製造技術を習ったおじいちゃんたちが元気に働いている。「バーバラはうす」では名古屋から移り住んだ職人さんを中心に手作りのパンを焼き、販売している。

 

 

 

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