3. 交流事業の効果
自然は偉大な教育者で、情緒安定の基礎や美意識などを形成していく上で重要な役割を果たすといわれている。農山村には子供にも大人にもかけがえのない自然が息づいている。疲弊した現代社会に暮らす子供たちにとって、人間としての心が形成される時期に美しく豊かな自然は不可欠である。ここに山里留学の大きな意義が存在している。
農山村は、ここ80年大きな変貌を遂げてきた。都市化の波は農山村にも及び、快適な文化生活の名のもとに、元来農山村が持っている美点をも奪い去ってしまった。
山里留学は、農山村の本来あるべき姿を再認識し、そこに住むことに誇りと自信を持ち、生活を豊かで潤いあるものにしていく意味で、七軒地区にとっても大きな意義があった。
山里留学を行なったことで、七軒地区の人々は、農山村の生活文化に誇れるものがあることを知った。少なくとも心の過疎が和らいだ。子供たちも同じである。留学生との生活を通して、農山村の良さを知らず知らず心に刻んでいるに違いない。一方、留学生にとっては、里親がいて温かく迎えてくれる故郷ができた。
4. 交流事業の問題点と今後の展望
山里留学が過疎化に歯止めをかけるまでには至っていない。現にその後も地区の人口は減り続けており、児童も減少している。過疎化に歯止めがかかることを望んでいた訳ではないが・・・。地域がぎりぎりのところまで追い詰められ、地域を愛する心が動いた結果が10年以上続いているのである。今後は、受け入れ学区の変更あるいは協力会の拡充など、地域環境の変化に応じてより良い継続の方法を模索していかなければならない。
より長く続けることによってこそ、この地区の定住人口は減っても七軒地区に思いを寄せる人口が限りなく増え、こうした人たちの交流により七軒地区の活性化が図られていくものと期待している。