これまで、白神探検隊には200人ほどが参加しており、白神山地のありのままの自然と住民との交流から、都市には想像できない当町ならではの体験を享受している。
3. 交流事業の効果
当町は主として夏の海水浴中心の観光で、平成4年までは年間の観光客は35万から40万人程度で、夏の気候に左右されるなど観光客の入込みが変動する不安定なものだった。また、県外客は2万5千人程度で、主に立ち寄り型の観光客であった。白神山地が世界遺産登録となり、白神山地のインフォメーション施設、温泉保養施設、地域で水揚げされる魚介類を直販する小売市場などが整備されたことで、現在は年間65万人以上となり、県外客も5万人を超えるようになった。このことは、観光施設の整備とともに白神探検隊での交流から、都市住民との接し方、提供して喜ばれる素材、プログラムなど様々なノウハウを学び取った事も一因と考えられる。また、白神探検隊の参加者はリピーターとして仲間を連れて訪れるとともに、口コミや旅行雑誌への投稿などの宣伝が大きな効果となっている。 交流事業の主体となっている白神ネーチャー協会においては、八森版の自然、歴史、風土などをマニュアル化したインタープリターカードを作成し、ガイドやインストラクターの養成に活用、会の活動は自然観察会やプナ林の再生など様々な機会をとらえて環境教育の実践にあたり、地域の活性化を牽引する団体として、都市や地域間交流のみならず地域内交流の推進にも寄与している。
4. 交流事業の問題点と今後の展望
白神山地には登山、渓流釣り、山菜採りなど年々入山者が増えており、自然環境や生態系への影響が懸念される状況になっている。このため、白神ネーチャー協会を主体としてより一層環境教育の普及に努めるとともに、観光客のニーズに応じ、山のプログラム、海のプログラム、山から川、海へとストーリーをもった活動プログラムを提供していく。また、観光客へのガイドでは秋田の方言で対応するなど、地域の特徴を出すようにしたことが成功しており、今後とも地域の伝統、文化などの継承を図っていく。
秋田新幹線からリゾート列車白神号の運行や大館能代空港が開港したことなど高速交通体系が整備され、白神探検隊など交流事業がますます活発化してきている。しかしながら、宿泊施設が少なく、公共の宿やキャビンの整備が必要となっており、長期滞在者には空き家などの活用を検討しなければならない。また、ホームステイや山村留学など交流事業の拡大を図り、都市住民に心のふるさとと思われるような交流の機会を構築していく。