「筆供養という行事があるが、筆記用具の供養ではどうだろうか。もう使用できない物なら燃やしても仕方がないが、各家庭や机に眠っている文具なら海外の子供たちに贈ってはどうだろう。キチンと使うのが本当の供養だと思う。」と提案したのは、東南アジアで植林などのボランティア経験があり、筆甫に住んで1年足らずのIターンの青年であった。
送り先は検討の結果、ヒマラヤのブータン王国に決まった。幸いにも隣町出身者が現地に協力隊の調整員として派遣されており、ブータン王国教育庁との橋渡し役をかって出てくれた。せっかくの贈り物に「鉛」という字は適さない。鉛筆は「縁筆」と書くことにした。
この忙しい時代に、自分たちで山に行って木を切り出し、皮を剥ぎ、手づくりの「筆神社」を建てて新たなイベントをする。そして、文具は海外でもう一度働いてもらう。このことが全国に広く紹介され、メッセージとともに連日たくさんの文具が送られてきた。
平成9年3月23日、「筆神社」が産声をあげた。遷宮祭の開催である。初めての筆まつりで供養した文具はその後、種分けされ、翌月にブータンに贈られた。半年後ブータン王国の子供たちが描いた絵17枚が届いた。この絵は地元の小中学校で展示後、協力していただいた県内外の学校、小さな親切運動県本部、都市銀行、商店街でも広く紹介された。
その後、筆まつりの例大祭は「いいふみの日」となる11月23日に毎年開催されることになり、「縁筆」についても各地で協力していただくようになり、地元の小学生の絵とともにブータン王国に贈られている。
3. 交流事業の効果
この2、3年で、地区民の数をはるかに上回る人達がこの山里を訪れている。そればかりか、都市近郊の児童・生徒たちも、「縁筆」の協力に強い関心を寄せている。また、国際交流など縁のなかった地域においても、多方面の協力を受けて文具を提供したり、児童・生徒が描いた絵を交換するようになった。平成10年の夏には、ブータン王国唯一の歌舞団と実行委員会との交流会が実現している。