滞在型市民農園(長野県四賀村)は、信州という立地条件を生かした構想である。他の交流事例にもみられるように、農産物をつくってみたい。花を育ててみたい。大地にふれてすごしたい。という都市住民は非常に多く、大都市圏の都市が設置する市民農園には申し込みが殺到している。ラウベ(作業小屋)があり、かなりの面積の農作物(花弁を含む。)を耕作できるという滞在型市民農園は、これまでは一般大衆にとってはあるいは夢の世界であったかもしれない。しかし、経済社会の成熟化、人口の高齢化・少子化、女性の地位向上、所得の上昇、自家用自動車の普及・運転免許者の増大は、大衆についても、それを現実の世界のものとした。これに着目し、モデルをつくったこと、その後も着実な事業展開を図っていることに敬意を表したい。
「ふれあい体験交流事業」(大分県庄内町)の交流の相手先の選び方、「家一棟分ふるさと森づくり事業」(大分県上津江村)のテーマの選び方と20年という長い期間にわたる交流の試みもまことに面白い。
従来からあるパターンのものも、内容をよくみると、それぞれに工夫をこらしていることがわかる。事例としてあげられるものには、マンネリ化したものはないようである。交流は、過疎地域市町村において板に着いたものとなっていることが感じられる。
山村留学は、長野県八坂村、和歌山県清水町、佐賀県富士町の3つの事例があった。里親方式がよいのか、合宿と里親との一定日数ずつの交替がよいのか、全国では百に近い事例があるが、それそれの実情に応じ更に検討する必要があろう。児童・生徒数の激減の状況、不登校対処のための保護者同伴の留学もあることなどのほか、「山のお父さん・お母さん」でなくて「山のおじいちゃん・おばあちゃん」になってしまった。「里親のなり手」がないなどの深刻な課題をなんとかのりこえてすすめてほしいものである。
国際交流については、「そろばん交流」(島根県横田町)、「青少年韓日親善交流(百済の里づくりの一環)」(宮崎県南郷村)などがあげられている。国際交流、なかでも国際協力は、自治体としては決して軽い負担ですむものではない。過疎地域市町村は、財政的にきびしい現実にあるだけに大変だと思うが、それを踏み切って実施していることに敬意を表するとともに、未来において、国際感覚豊かな人材が輩出するなどの大きな成果を祈りたい。
「交流」は、近接する市町村が一体となってすすめられることが望ましい。今回の現地調査対象では、「アンテナショップ:ぐんぐんおおち」(島根県邑智郡町村総合事務組合)、「県境サミット」(鳥取・島根・岡山・広島の4県16市町村、事務局・鳥取県日南町)、「阿武隈圏域13町村と首都圏との体験交流」(福島県常葉町関連)があげられる。一体化の統制をきびしくしない方がよい結果を生むようである。