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更に、新・全総は、計画実現の戦略(重点事項)の冒頭に「多自然居住地域の創造」をあげている。これは、中小都市、中山間地域等(その多くは過疎地域市町村でもある。)の豊かな自然に恵まれた地域を21世紀の国土のフロンティアとして位置付け、地域連携を進め、都市的サービスとゆとりある居住環境を併せて享受できる自立的圏域を創造しようというものである。交流人口の拡大、UJIターンの促進、マルチハビテーション(複数地域居住)、テレワータ(情報通信を活用した遠隔勤務)によって、地域の活性化を図るとしている。「地域半日交通圏」、「情報活力空間」なども唱えられている。

 

2. 今回の調査研究現地調査事例についてのコメン卜

今回の調査研究では、現地調査の対象としたのは、20町村(組合)にすぎないが、それだけの体験でも、事前に書類等をベースに想定していたものと、現地でみる実態との間にかなりの乖離の存在は否定できなかった。また、年月を経る中で、一方には、いよいよ拡大充実していくものがあると思えば、他方には、見直しや転換が迫られていると感ずるものもあった。そのような差が何故出てくるのかを考えると、結局のところは、地域の特色、地域の個性についてよく学習し、それを生かすうえにふさわしい事業を考えたところが成功していることを再確認した。一村一品運動の各地での展開、「自ら考え、自ら行う地域づくり事業」(ふるさと創生一市町村一億円事業と呼ばれることが多い。)に始まる“ふるさとづくり”“地域づくり”の各事業の展開等によって、各市町村は、個性的地域整備についてはかなりの学習をすませている筈である。地域間交流にあたっても、その成果を生かすことを更に期待したい。

次に、地域活性化全般について言えることであるが、交流についても、すぐれたリーダーが不可欠であることがわかる。そのリーダーとは、当該自治体の首長、職員、住民の中にあるとは限られず、当該市町村の地域個性形成、当該地域間交流について一肌ぬいでくれる専門家を含めなければならない。このたび現地調査の対象となった「オホーツク音楽セミナー」(北海道女満別町)、「古湯映画祭」(佐賀県富士町)は、それぞれの専門家の肩入れがなければ永続できなかったであろうと思われる。

特産品を生かすことは、地域の個性形成、地域間交流で、きわめて重要だが、特産品は必ずしも本来的に有価なものにとどまらないことは、「カブトムシを中心とする体験交流」(福島県常葉町)で示されている。デパートなどで、夏場売られているカブトムシ等の昆虫は、どういう経路で生産され、仕入れられているのかについて疑問をもっている人は多いと思うが、この例にみられるように、自然な形で孵化したものの利用であればまことに望ましい。更に工夫をこらして地域経済の活性化に貢献するようにしてほしいものである。また、この例は、子供というターゲットの定め方のたくみさに感服する。

 

 

 

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