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そして、それにかわる交流人口の増大という方向へ行ったと思います。そういう中で、過疎対策というのは内なる整備と、外へ向けての整備とがあったと思うんですが、最初のうちは、自分の村から、町から出ていった者を戻そうとするために、自分の町、町村をどういうふうに整備するかということから始まった。しかし、それじゃ追いつかないんで、広域化する中でそれをやっていこうという方向へ行った。それの、ある意味じゃ行き着いたというか一つの典型的な形式が、一郡全体とか、あるいは県境サミットというような県境を越えた広域化の中で処理していくという方向であったと思います。

こんにちは、そういう中で新しく田舎と都市との交流が出てきているのではないか、あるいは求められているのではないかというふうに思いました。グリーン・ツーリズムというふうな考え方は、あまり身近な問題じゃなかったものですから関心もなかったんですが、今度、邑智郡でグリーン・ツーリズムというものを考えさせられました。つまり、一過性の交流人口の増大じゃなくて、もうちょっと長い期間、滞在型の交流。農村体験とか農業体験は以前からあったと思うんですが、都市と農村との関係が、大分変わってきているんではないか。つまり、過疎対策によって農村そのものが、ある意味では施設そのほかで都市化してきているという、そういう一面があって、都市と農村との平均化というふうな問題が出てきているということ。そして、特に交通事情がよくなって、農村が都市と切り離された世界ではなくて、その生活空間の中…、中と言わないまでも、近くに位置するものになってきている。これは、過疎対策の当然の成果というか結果だろうと思います。

もう1つは、言うところの自然とか環境なんかを保存していかなきゃいけないというふうなことで、農村が、いわばそういう部分を受け持っていることになるんだろうと思いますが、都市の人間もそういう自然とか環境なんかに対する関心を高める中で、農村というものを新しい目で見るようになってきているのではないか。しかし、かつての農村とか山村は、そこに別荘を構えるような土地、つまり非日常の世界、非日常の空間と言ってもよかったものが、交通機関の整備で、むしろ日常性の中に、生活空間の中に取り込まれて来つつある。そうすると農村のほうも、そういう都市の人間を迎え入れるに当たって、それこそ、新しい交流の哲学みたいなものを持っていないといけないんではないか、そんなことを思っていました。といって、何か決まったいい考えがあるわけではありませんが、自然を媒介として、都市と農村との関係を新たにつくり出していく必要があるのではないか。前回の会合で、都市と農村の「可逆関係」をつくり出す必要があるのではないかというふうに申しましたけれど、それは、ある意味で都市と農村が同じレベルに来て、そして行ったり来たりという関係をつくり出していくというようなことが必要なのではないかなと思いましたからで。ただし、私にはまだちゃんと先が見えておりませんけれど、そんなことをつくづく思いました。

 

 

 

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