この計画の策定後に、町内では新たな「交流事業」が具体的に取り組まれるようになった。それは「山村留学制度」と、自然保護・国際交流を目的とした「ファーブルの森づくり」である。以前より行われているイベントの「古湯映画祭」も「交流事業」と考えられるので、これら3つについて詳しく見ることにしよう。
2 古湯映画祭
富士町の中心集落である古湯には、約2200年もの歴史をもつと伝えられる温泉場を中心に町並が形成されている。そこで昭和59年から始められた「古湯映画祭」は、今年(平成10年)で15回を数え、映画愛好者の間では、その名が広く知られたイベントとなっている。
(1) 発端と目的
映画祭の開催は、都市との交流を模索する中で、町役場に勤める一人の映画好き青年の発案から始まった。当時、「村おこし」の一環として県民の森音楽祭が行われており、その企画運営に当たっていた広告会社の人からのアドバイスもあったという。 古湯温泉で、映画を通して都市部の人たちとの心と感動の交流を図るとともに、富士町をアピールし、観光客の増加と産業振興を図る、というのが当初の目的であった。
昭和59年の第1回の映画祭は暗中模索の状態で、佐賀大学・大分大学・第一経済大学の映画研究会や個人の映画愛好者に呼びかけ、新進の監督を招き、その作品と映研の作品などの上演でスタートを切った。時期は7月の2日間。延べ参加者は約600名で、まさに「手づくり」の小規模な映画祭であった。映画会開催中に参加者アンケートを行ったところ評判は良く、次年度開催を望む多くの要望が寄せられた。
(2) 映画祭の内容
映画祭のあゆみを表2に示そう。第2回目からはその後に定着したスタイルの映画祭となる。その日ごとにテーマを決め、10〜20本の邦画を上映し、その映画の監督や俳優、その他の映画関係者等を招いて講演会・シンポジウム・交流会を開催するというスタイルである。期間は9月の土曜・日曜を含む3〜4日間。会場は古湯集落にある北部山村開発センター。各年の延べ参加者は3000〜5000名ていどである。
映画を上映するだけでなく、監督・俳優・映画関係者等との交流が参加者にとって大きな魅力である。