就業人口もまた一貫して減少していて、平成2年〜7年の間に3千人を割っている。富士町に常住する就業人口の産業別推移を見ると、第1次産業は減少、第2次産業は微増、第3次産業は増加を示している。農業は依然としてこの町の主力産業で、この町の総世帯の半分近くが農家である。平成6年度の農業粗生産額から見ると、野菜が40%を占めて米の37%を上回っている。また花卉も4%余りを占める。施設園芸による野菜や花卉の栽培、露地でのレタスやなすの栽培が、稲作にもまして盛んである。
商業・建設業・製造業はいずれも停滞気味である。ただし、これら3業種については、佐賀市との間に就業人口の流入超過を示している。一方、サービス産業の就業人口の増加が目立つが、町内での観光産業の展開や佐賀市のサービス産業への就業の増加がその原因である。町内には古湯・熊の川の歴史の古い2つの温泉場があり、北部のダム湖である北山湖の周辺には林間リクリエーション施設が整備され、また「21世紀県民の森」が開園している。平成2年には、町内に九州初の本格的人工雪のスキー場がオープンした。
また、町域のほぼ中央部に計画されている嘉瀬川ダムの建設にかかわる水没集落の移転や道路の新設が進行中である。このダムの完成によって、道路交通や観光開発を巡る状況が大きく変わることが予想される。
現在、「かがやく自然と歓声(よろこび)がこだまする温りのある町」を目標とする「富士町総合基本計画(平成3年度〜12年度)」に基づいて、諸施策が実施されている。この「基本計画」の中では、「農業の振興」の項や「観光・レクリエーションの振興」の項で、「都市と農村の交流を深める」・「都市と農村の交流の場をつくる」と指摘されているが、イベントの実施・支援による商業振興を除くと、必ずしも「交流事業」が格別の位置づけをなされている訳ではない。