県境サミットとして共通の事業もするが、16市町村はそれぞれ独自のまちづくりを進める。そうすることで時には提携し時には競争し合うといった緊張感をもった団体を維持したい、とのことだった。こういう広域運動においてもっとも大事な点であり、正しい方向性をもつ認識といってよいであろう。宝石のエメラルド(翠玉)は、むろん中山間地帯の豊かな緑の自然環境を象徴する色であるとともに、磨かれることでそれぞれの面が輝きを増す多面体を構成している。それはサミットに参加している各自治体が独自性を保持しつつ共存することを目指すという、このサミットの趣旨や目的にいかにもふさわしいネーミングで感心させられる。そして平成6年以後の事業展開もその名称にふさわしい推移を辿っているように思われる。
4 県境サミットの現状と課題
ただしこの県境サミットの趣旨や運動が最初から人々の理解を得られたわけではなかったようだ。たとえば『備北新報』平成10年2月21日の「土曜論評」は「県境サミットに疑問符」という見出しで「A・B」氏の意見をのせている。志は高邁で論旨には異論はないが、と断わりながらも、評論家が唱える「国家道州制」の前段階のようなもので、空論、ますます現実離れがしてくる、と断じている。この論評は広域合併論の立場からなされているが、それは県境サミットにいささか性急な結果を求め過ぎている論のように思われる。