ここでは各市町村個々のデータはあげないが、中山間地域に共通する課題を抱えていることが、全国でもほとんど例をみない市町村協議会-県境サミットを結成した根本理由であったことはいうまでもない。
3 エメラルド・プロジェクト
さて県境サミットの立ち上りからその後の展開を辿ってみるとき留意されるのが、各自治体の関係者が順序を踏んで相互理解を深め、その実をあげて来ていることである。各首長で構成される役員会はもとより、幹事会(各自治体の担当課長で構成)、担当者(直接担当職員)会議と三種類の会議を毎月のごとく、場所を移しながら開催、翌平成6年4月には取組むべき共同事業計画を立てている。
(1) 地域フォーラムの開催と圏域基礎調査
(2) 圏域企業合同説明会
(3) フォトコンテストの開催
(4) 圏域マップ、施設共同カードの作成
(5) 先行地事例調査
などがそれで、直ちに実行に移している。ちなみに予算は各構成市町村が負担し、21,112,000円が計上されている。
表1 県境サミットの理念と方針
第1に「パートナーであってライバル、ライバルであってパートナー」ということです。16市町村はそれぞれ独自のまちづくりを進めていますが、時には提携しあい時には競争しあうといった緊張感を持った関係を持ちたいと考えています。
第2には「情報の交換・公開」で、互いのまちの情報を交換しあう、広報の交換はもとより、主要計画等を話し合っています。また県境サミットの活動を圏域の住民に公開していく、結果はもちろんですが事前になにをどこで行なうということも周知したり、参加を促したりしています。
第3には「新しい交流ステージの創出」です。これまでの広域圏は中核となる都市を中心に周辺市町村で広域圏を創ってきましたが、県境サミットは中山間地域の中核のない地域で自らのまちがどれだけの交流圏をもてるかという実験でもあります。
第4には「都市的環境インフラの整備」です。県境サミットは「森林都市圏」構想という中山間地で豊富な自然環境を維持しつつ、快適な居住環境を創ろうとしています。
第5には「水源地帯としての役割」で、中国地方の主要河川の水源地であるこの地域のアイデンティティでもあります。
森林都市圏構想の概略は、森林都市圏の実現に向けて農林業と情報化産業を中心とした地域産業の振興、県境・市町村域を越えた情報網の整備、環境の保全、高齢社会の先駆としての圏域整備、圏域の地域間アクセス網の整備、福祉・医療・工芸の広域学園園整備、これを実現するためのフレキシブルな協議会組織の維持などです。